第30話「もしもしってなんですか?」
「えっと、パルマさんだったよね?」
「はい」
「誤解ということだけは、ここで弁解させてくれ」
「あ、はい」
なぜ、俺がここまで必死に弁解をしているのか。
まぁ元はと言えば、エマが変なことを大声で叫んだのがいけないのだが・・・。
何がともあれ、このままだと、この目の前にいるエマの養子の子、パルマにあらぬ誤解を持たれてしまう。
ということで、俺は必死にコトの詳細を説明した。
「なるほど、そうだったんですね」
「理解してもらえましたか?」
「もちろんです。でも、エマ様も嫉妬していたのかもしれませんよ?」
俺の耳に口を近づけ、エマに聞こえないように小声で言ってくる。
エマが、嫉妬しているのかも・・・と。
「ど、どういうことだ?」
「それは秋斗様が考えることです」
「お、おう」
「ちょっと、私のパルマちゃんに変な吹き込みをしてないでしょうね?」
「してないからな?」
「心配だわ」
「俺は逆に、エマが変な吹き込みをしていないか心配だ」
その後、パルマは自分の仕事をするため退室していった。
それからというもの、俺は公務に戻り、パルマが言っていた、エマが嫉妬しているという言葉を完全に忘れていた。
まぁそれは結果的に良かったことで、もし意識していたら、その日は確実に公務に支障が出ていただろう。
現に、今はそれが気になって寝れないのだ。
ベッドに横たわり、すぐ横にある窓からボーッと外を眺める。
「あー・・・どうしよう。寝れない」
ベットに入ったのは、夜の11時。
なのに、時計の針は、日付が変わって1時を指している。
二時間も寝付けないでいたのか。
別に好みの女性というわけでもないけれど、それでもエマは女性だし、好感を持たれてると思うと、なんだかなぁ・・・。
このままだと、普通に徹夜ルートになってしまう・・・そんなことを考えていると、バイブレーションの震動を立て、スマホが暴れ出す。
「誰だ・・・? こんな時間に」
画面を見ると、電話がかかってきていた。
相手は・・・。
「もしもし?」
「こんばんは、パルマです。もしもしってなんですか?」
この国だと、『もしもし』すら言わないのか。
ほんと、日本とかけ離れた文化だよな。
「あぁ、すまない。というか、どうしたんだ? こんな時間に」
「いえ、秋斗様が情けなくも好みじゃない女の子のことを意識して寝付けないのではないのかと思いまして」
この人、どっかで俺のことを脳内まで監視してるんじゃないのか?
そう思えるほど、今の状況はパルマの言う通りだった。
まぁ余計な言葉もあったけどね。
「普段だったら怒ってたぞ」
「あはは。ですよね」
今の言葉と、こんな時間に電話をかけてきたこと、二つに対してだ。
まぁ実際のところ、女の子からの電話なら何時でも構わない、むしろいつでも大歓迎な俺である。
「まぁ、確かに今は寝つけていない」
「お話の相手になりますよ」
「え、でもパルマさんは寝なくても・・・」
「いえいえ、こういうことも、やってみたかったんですよ」
"やってみたかった"とは、夜に誰かと話をすることか? それなら他の人がいくらでもやってくれそうだが。
「私と同い年の人、周りにいないんですよ」
「あぁ、そういうことか」
まぁ17歳で政府関係者ってのもねぇ。
そりゃ少ないよ。
「なので、今夜はいいですよね?」
そう言われると、断れないのが男というものだ。
まぁそうとも言い切れないけど、少なくとも俺は断れない人なので。
「わかりました」
彼女の願い事を承諾しました。
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