第17話「この状態で寝ないでくださいよ」


夜が更けて、わかったことがある。



「いやっほー」



エマは酔い癖がものすごく悪いということ。


そして、ほぼ同じ量を飲んでいる俺はなんともないこと。


これは、俺が酔わない体質ということで良いのだろうか。


あともう一つわかったことがある。



「Don't want work!」



めっさ英語やんけ。


文法はめちゃくちゃだけど、物凄いネイティブ発音である。


酔うとこの人、何かと日本語以外の言語で話すんだよな。



「おーい、水でも飲むか」


というか、ワインで酔うってイメージないけど、酔う人は酔うんだな。


まぁ量を飲めば、ワインもビールも同じお酒ってわけなんだな。



「秋斗は酔わないわねぇ」


「逆に、エマがすぐ酔う体質なのかもな」


「Non mi ubriaco!」


「日本語でお願いします。理解できませんよ」


「うぅ・・・」


「なんでそこで泣くんですか!?」



情緒不安定だな。もはや手に負えん。



「あきとぉぉぉ」



そう言い、泣きながら抱きついてくる。


普通、俺みたいな思春期の男子に異性の人が飛びついてくるというのは、まぁそれだけで色々と興奮しちゃうのだが、今回ばかりはそうはいかなかった。



「酒くさ・・・離れてください」



お酒の独特の匂いにプラスして、ワインの独特の匂い。


少なくとも俺は、良い匂いとは言えない。



「秋斗ぉー・・・んにゃー」



何言ってるんだこの人。



「とにかく、どいて下さい」


「いやだ・・・どかないよ」


「なんでですか」


「・・・hunn dech gär」


「だから、日本語でお願いします」


「ech hunn dech gär!」


「うーん・・・何語だろうか」



英語ではない気がする。


何となくだが、俺の直感がそう呟いているのだ。



「秋斗!」


「なんですか」


「おやすみ」


「え、この状態で寝ないでくださいよ!?」



そんな言葉も虚しく、エマは俺の膝の上で寝てしまった。


シュチュエーション的には最高・・・? だとは思うが、実際問題、人の頭って意外と重たいわけで・・・。



「足に血流が通らない」



今の体制は、正座だ。


なぜ正座をしていたのかと言われれば、よくわからない。


まぁあれだ、無意識にやっていたというやつだろう。


だがそんなことはどうでもよくて、とにかく、このままだと体制的に辛いとこがある。



「よいしょっと」



仕方ないのでエマをお姫様抱っこし、近くのベッドまで輸送、適当に掛け布団でもかけておいた。



「にしても、寝顔は可愛いんだな」



起きてると言動やら挙動やらでムカつくことが多いけど、大人しく寝ていれば、エマも一人の女の子ってわけだ。



「・・・」



エマが寝たことにより、静寂な時が流れる。


窓からは壮大というか、圧巻というか。とにかく綺麗な、ネオンが煌びやかな都会の夜景が観れる。


遠くはベットタウンで、もう深夜ということもあり、電気が消えている家も多い。


建物の高さが高すぎるためか、防音の部屋だからなのか、都会特有の雑多な騒音も全く聞こえない。


何もすることがなくなった俺は、ワイングラスを手に取り。



「にしても、白ワインか。クセになる味だな」



何となく呟く。


でも、少なくともこの品種は気に入った。美味しかったしね。


日本にいたら、俺が酒を飲むのは法律違反。なので、これも異世界に来たからこそ出来たこと・・・だよな。


そんなことを思いながら、ワインボトルに入っている残りのワインを全て飲み干し、エマのベットに寄りかかる形で俺も眠りについた。

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