第34話 やる時はやる男、ジョッシュ
結局、どうなったかというと......
無事にアンデット湧いてきました!!
よくないけど、よかったぁ〜っと、アレックスは胸を撫で下ろした。
インターバル3時間ちょっとで出てきたので上々じゃないだろうか。
ただ、獣のアンデットがほとんど見られなくなった。
多分、森の中の動物の死骸のほとんどがアンデッドに変わりつくしたところに、掃討作戦が決行された結果だろう。
今は、異形だけがちらほらと這い出てきている状態だった。
アレックス組は、1体、1体、ちまちまと浄化をしていった。
ジョッシュも異形に、果敢に向かっていきザックザク手足を切断していく。
夜もふけて日付が変わった頃には、魔力切れを起こした魔術師が段々と増えてきて、撤退していく討伐組が増えてしまった。
今現在、視界に入る討伐組は、もう10組もいない。
よって、森近くで異形を浄化することが難しくなった為、ジョッシュのフォローが必須になってきた。
ジョッシュは、ダダダダっと走って剣を横凪に一閃する。
グシャっ。
ーまず、足!!よしっ。ー
舞うようにくるりくるりと異形の周りを回りながら、足と尻尾をシュパッと手際よく切断していく。
斬られた異形は立っていられなくなり、今度は腹這いになり手を使って向かってくる。
ーつぎっ、手っ!!ー
息つく暇もなく手の切断にとり掛かる。
地面スレスレに剣を傾け、下から掬い上げるように何本か纏めて手を切断、
ザシュっ! ボタボタボタっ
ぶんっと剣を払って、剣についたヘドロを飛ばす。
飛び散ったヘドロが触れた場所は、地面も黒くなるが、ジョッシュの肌も黒くなる。
それでもジョッシュは、慌てずに剣の切れ味を維持しながら、何度も手を斬り落とし異形の進行速度を緩めた。
アレックスに異形が近づきすぎた時は、虚無の口だけは気をつけながら、異形の背に乗り上げて手を次々に斬り落とす。
その際、ジョッシュの脚は膝上大腿なかほどまで真っ黒に染まってしまう。
それでも、攻撃の手は緩めない。
さすが最年少騎士というだけあって、やる時はやる。気概もあり実力もある男だった。
だから、アレックスは安心して
『万物を創りし神々よ。
今、悪しきものを退け浄化する力を授け給え。
我が名は、アレックス。聖なる力を行使する!』
祝詞を寿ぐと、アレックスの手からキラキラと輝く青い炎が顕現した。
それを、ジョッシュが斬り刻んでる途中の異形に向けて放出する。
すると、ジョッシュと異形が青い炎に包まれる。
異形が崩壊し始め、光り輝く粒子になって、空に向かって消えていった。
ジョッシュの肌の黒化も綺麗に治った。
ーつぎっ!!ー
ジョッシュは、浄化の炎に包まれながら次の異形に狙いを定めて向かっていく。
足を止める余裕は全くない。
魔術師がこんなに早く引っ込むとは思ってなかった。
想定外だ。
今では、もうアレックス達しか残ってない。
笛を吹く暇もなく、詰んでいる。
(あー、中の騎士たちが気を利かせてやってこないかな。俺たちだけじゃ、もうギリギリだ。)
肩で息をするジョッシュを見てアレックスは祝詞を変更することにした。
(さっきので祓詞で、いいな。結局アンデット湧いてきたし、あの範囲なら原因まで浄化されないみたいだし、いろいろ限界だ。許せ、ネフィ。)
『天上に居ります数多の神々よ、
我が名は、アレックス。
アレックスの体から爆発的に光が膨れ上がり、流星の如く勢いよく一面に広がっていった。
後には、神の御許に還っていった残滓がキラキラと空中に漂い、やがて消えていった。
「ジョッシュ。お疲れ。一旦要塞に引き上げるぞ。
三時間は、奴ら出てこないはずだ。
それに、その後すぐ夜明けになるから今日はお終いになるはずだしな。」
「...は、..はぃ..。はぁっ、はぁっ、はぁ....。
でも、...いいんで、しょうか?途中で、..やめ、..てっ、怒られませんっか?」
ジョッシュは全身で呼吸をして、息も切れ切れだ。
「いいんじゃないか。討伐していけば、数が減る事もわかったし。異形は、なんらかの原因があって止めどなく出てくるっつう事がわかったからな。重畳だろう。」
「ジョッシュ。回復魔法かけるぞ。そこで止まれ。」
ジョッシュの足元に魔法陣を広げ、指をパチンとならす。
『体力回復 ヒール』
ふわりと温かい光がジョッシュにまとわり消えた。
「わぁ、すごいですね!一気に体が軽くなりました!ありがとうございます。」
「こっちこそ、ありがとな。討伐、すごく助かった。」
「い、いえっ!そんなことないですっ。最後はやっぱりアレックスさんの特大聖魔法になっちゃいましたし...。」
しゅんとするジョッシュ、なんだか耳が垂れて見える。
「あれは、中にいる奴がダメなんだ。俺たちしか残ってないのわかってるだろうに...。
追加要員をよこさないのが悪い。ほんと、ムカつくなっ!!
多分、ネフィも最後まで討伐してたんだろう。
じゃないと、あいつが追加をよこさないわけがない。」
「信頼してるんですね。お二人は、長い付き合いなんでしょう?羨ましいです。」
「あー、うん、ソウダナ、イイモノダナ。」
(いついかなる時も死がついてくるがなっ。)
アレックス達は、長い掃討作戦を終えて、ようやく要塞に帰ってきた。
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