第15話 ギルドマスターへの報告
本文
「私はマンチェスタのギルドマスター ウォーレンだ!」
どどんっと効果音がつきそうな筋骨隆々の大男がソファーの真ん中にどっしり座っている。
大きな大剣を左手に杖のようにつかんでいて、いつでも抜剣できるように座っていて隙もない。
威圧感、ぱねぇ...。
「俺たちは、アレックスとネフェルティです...。」
プルプル震える羊狩りの羊の気分だ。
帰りてぇ〜。
「「「.........................。」」」
何故、無言だしっ!!
なんでマスターの部屋に呼ばれたしっ!
要件はっ?!
「「...........。」」
俺たちの沈黙に耐えかねて、ネフィが吠えた。
「用がないなら、帰るっ!お風呂入りたい!ふかふかの布団で寝たい!魔力回復しないとだるい!まず、茶を出せっ!労えっ!」
ぷんぷん、激おこでケインを不敬にもマスターに向けて振り下ろす。
バンっ!!
かちゃ。
同時にドアが開いて、マニュリさんがお茶を持ってきた。
「はぁーい、お待たせ!寒かったよね、暖かいお茶よ。
マスター、要件まだ伝えてなかったんですか?
ごめんねぇ、マスター口下手なの。少し温かく見守ってくれる??」
お茶をコトンコトンと机に並べ、マニュリさんも席についた。
「.....。大義であった。.....。強い....。弱点は......。地点.....。でどうだった?」
マスターがなんか喋った。
はぁっ!?何が聞きたいのかわかんネェよ!
マニュリさんがお茶をズズッと飲んで補足する。
「『討伐ご苦労様でした。君たちはすごく強いんだな。アイスゴリラの弱点はなんだ?どの辺にいたのか?他にもいそうなのか?どうなんだ?』って言ってるよ。」
マジか、マスターの通訳ですか?
すごいよ、マニュリさぁぁぁん。
俺は、マニュリさんに向き合って答えるべきか、マスターに向かって答えるべきか猛烈に悩んだ。
とりあえず、マスターに向き合う。
ながーいものには巻かれろ精神だ。
「えっと、ありがとうございます??
アイスゴリラは、水無効。火強力耐性。雷有効。闇が弱点です。討伐するなら、まず雷で足止めをする魔術師と闇を扱う魔術師がいると良いと思います。
場所は、マンハッターホールの裏側に1体、入山から比較的近い場所に一体いました。度々見かけられたのは近くの個体でしょう。焦げ跡がありましたから。
えっと、あとなんだっけ?...あ、他にもいるのかか。
索敵を山全体にかけた感触としては、もういないかと思います。....以上です。」
「闇...。二人....とも?個体...違う。詳しく教えてくれ。」
「『闇が弱点なのか。二人とも魔術が使えるから、分担して討伐したのか?1体ずつ状態が違うが、討伐した時の状況を詳しく教えて欲しい。』だって。」
マジか?そんなこと聞いてきてたのか。
半端ない通訳能力だな、マニュリさぁぁぁん。
「ネフィが最初ブルウィップでアイスゴリラの動きを止めてくれました。そのあとは、俺がグラビティで拘束させてから色々魔術を試しました。
1体目は時空魔法で窒息死させたので、討伐部位の首をネフィが鞭で切断して持って帰りました。
2体目はたまたま出会ったので、雷、重力、闇で一気に討伐したので干からびました。以上です。」
淡々と聞かれたことだけ答えていく。
「魔力不可。回復は、したのか?」
ちょっと文章っぽくなってきたけど、まだわからん。
マニュリさぁぁぁん。
「『魔力が測定不可になるほどの魔力を持っているらしいな。これだけ魔術を使っても、魔力が残ってるのか?魔力回復薬は使ったのか?』だって。」
マジか?マスターの発言、全然文章になってなかった。
すごいな、マニュリさぁぁぁん。
「魔力回復薬は使ってません。今のところ、魔力が枯渇する経験をしたことないので。
今回も問題無さそうです。以上です。」
ファンタジー要素あふれる薬って、魔術で事足りるからわざわざ買う必要性がないんだよなぁ。
魔力回復薬ってどのくらい効くのか、飲んでも検証できないだろうし。
総魔力に比べたら、飲んでも雀の涙だと思うんだよな。
ネフィは、使ったことあるのかな?
チラッと、ネフィを見ると相当だるいのかイライラしながら腕を組んでいた。
おおぅ、早く討伐終了報告して帰らないと。
今、鞭を振り回されても状態復元魔法を発動できるか分からんぞ。
「あの、そろそろ宿に戻りたいのですが。(マジで早くっ!)
討伐報酬って、タグに入れとけばどこのギルドでもお金出せるんですよね?(タグにどうせ情報入れるの時間かかるんだろう?外すからほれっ!)
とりあえず、報酬はネフィと半分ずつ折半でタグに入れてください。
それが、終わったらネフィだけでも宿へ返させてくださいっ!(ほんとに大事故が起きるぞっ!)」
俺は、もう必死に懇願した。
希望が届いて、別のギルド職員が水晶とキーボードをやっと持ってきた。
「はぁーい、じゃあネフィちゃんとアレク君のタグ外してちょうだい。あ、ネフィちゃんとアレク君って呼んでいいかな?勝手にそう呼ぶねっ!
じゃあ、さっさと報酬入力しちゃう。
そろそろネフィちゃんが、鞭で暴れそうだしね。」
マニュリさんは、水晶の手前にタグをセットして、キーボードで報酬金をカチカチと入力した。
水晶がぼやっとピンクに光って数分で光が終息した。
「はい、ネフィちゃん!ご苦労様でした。もういいよ!」
マニュリさんがネフィのタグを差し出す。
ネフィは、差し出されたタグをムンズっと掴んで席をたつ。
「じゃ、アレクあとお願い。帰る。風呂。寝る!」
ネフィが勢いよく帰っていった。
俺は、ぽつんとその場に残された。
「じゃあ、アレク君タグちょうだい。入力しちゃうね。」
マニュリさんがカチカチと入力し出した。
その間、ギルドマスターと向かい合う。
「....今後、強い、場合、招集。冒険者、どうだろうか?」
招集??強い?
あー、強い魔獣が出た時招集するってことか?
どうだろうかって聞いてるくらいだから、断ってもいいってこと??
「えーと、呼ばれてもここに来るまで時間がかかります。それに冒険者として活動する予定がありません。
この答えであってますかね?」
「あっている!」
マスターが満足そうだ。
俺の通訳能力が上がった!!
チャララらっちゃちゃ〜♪
アレックスのレベルが上がった。
「すごぉい!マスターの発言がわかるなんて、ギルド職員に欲しいわぁ。
ちなみにダメで元々のつもりで招集かけるから。住んでる場所教えてくれる?」
マニュリさんが手をパチパチ叩いて称賛してくれた。
やったよ、マニュリさぁぁぁん。
「えーと、俺はヴァンキュレイト領のカレード地区に住んでいます。
薬師もしくは何でも屋と言えば、住処がわかるはずです。
ネフィは学園にほぼいます。」
「カレード地区というとヴァンキュレイトの邸宅があるとこね。二人は、どうやって出会ったの?貴族と平民なんてなかなか珍しい組み合わせよね?」
両手の指を絡め顎をのせて、興味津々で聞いてくるマニュリさん。
残念だが、色っぽい理由は何もないぞ。
「あー、ネフィが規格外だから。
その辺に寝てたら声をかけられたっていう出会いっすね。7つの時からなので幼馴染です。」
「え〜、ネフィちゃんから声をかけたんだ。子供時はアレク君、かっこよかったの?」
何気に失礼だなっ、マニュリさぁぁぁん!
今も昔も普通だ!
「いえ、平凡な平民でしたが。多分生垣の中で寝てたので興味を引いたんでしょう。かくれんぼ中だったもので....。」
「ふーん。
じゃあ、はいタグの書き込み終わったよ。
これからも高額の報酬金の場合はマスターの部屋で依頼完了報告する流れになるから。今後もよろしく〜。」
ひらひらと頬杖をつきながらマニュリさんが見送ってくれた。
ようやく終わったよ、俺も風呂に入ろう...。
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