第46話 「地元名士」成績が上がる。



ブルーが基調のおしゃれな壁。


流行りのオーディオが並んでる。

・・・・並んでるのは、SONYの高いセットだ。・・・・ボクの憧れのセットだ。


流行りの歌が次から次にかかる。


ふたりで聞いていた。


別の壁には棚があって・・・・トロフィー・・・・ボール、グローブが並んでいる。


ここは、関川の家だ。関川の部屋だ。

野球部のエースで成績優秀。

家は、由緒正しい「地元名士」・・・・店が何店舗あるんだか知らない。


この家は新しい・・・・なんだか、家ってより、小さなビルみたいなカッコいい家だった。


・・・・自分の部屋があるっていいよな・・・・

ボクの家は、6帖と4.5帖で親子3人が暮らしてる。


流行りのデザインのテーブルの上には、紅茶が出されていた。・・・・そしてクッキー。・・・・さっき、お母さんが持ってきてくれた。


3年生になって初めて同じクラスになった。

「反志村」

そんなことから仲良くなっていった。


たまにこうやって遊びにきていた。




教室。


先生から名前を呼ばれた。


「はい」と返事をして教壇に向かう。


テストを受け取った。

この前の実力テストがもどってきた。・・・・数学。



席へ戻る。


「カズ、どうだった?」


高柳が声をかけてくる。・・・・紺野、南原、沖永、東・・・・・「窓際族」が集まっている。


高柳は文化祭のバンドでボーカルをやった。

・・・・われらが「窓際族」ではリーダー的存在だった。


面倒見がよくて、親分肌で・・・・みんなの接着剤って感じだった。


元々「窓際族」のメンバーは、幼稚園から一緒ってな幼馴染の仲間内だった。

ボクが、中学校1年生で、転校してきた時に、たまたま高柳が同じクラスだった。

それで、何かれと面倒みてくれたのが始まりで繋がっていった・・・・どーゆーわけか、3年生のこのクラスで、「窓際族」みんなが同じクラスになったってわけだった。


だから、元々あった幼馴染のグループに、なーーんとなく、途中からボクが入っていったってことなんだよな。


・・・・まぁ、ボクにとっての「親友」って呼べる存在は、陸上部の富岡だったり、出水だったりするわけで・・・・「窓際族」は、クラス内での友だちって感じだったんだけどね。

・・・・ところが、3年生になって・・・・受験一色になって・・・・部活にも行かなくなったため、なんだか「窓際族」の連中と一緒にいるのが当たり前になっていった。・・・・それでバンドまで組んじゃったわけだ。



みんなからの注目の視線・・・・


・・・・何・・・??・・・テストの結果・・・・???・・・・見たい・・・・・笑・・???



別に隠すこともない。


机の上に、どどーーんと出してやった。



「88点」



・・・・座が凍りついた。


「ひっぇぇぇ~~~~~~~」


驚きの声が上がる。


「へっへっへ・・・・400点いったぜ」


どうだとばかりに言ってやった・笑。


「カズ、すげぇなぁ~~~~~オレはダメだぁ・・・・」


高柳が頭を抱えた。

そーとー悪かったのか???・・・・・笑。



この町では、受験科目は5教科。500点満点だ。その点数で受験の合否が決まる。



基本的な受験先の普通科高校は3校。


上沢高校。

普通科は400点以上で合格。上の特別クラスは450点以上。・・・在校生のトップクラスは東大までが視野に入るってな、ちょー進学校だ。


中場高校。

350点ってとこらしい。


下郷高校。

新設校ってことで250点でも合格するって話が出てた。


これ以下なら、農業、工業、商業の実業高校ってことになる。

学科とかによって違うらしいけど、200点くらいあれば十分合格。150点くらいでも学科によっては入れるらしい。

・・・・さすがに、それ以下なら、私立の「アホ学校」に行くしかない。


おおむね、こんなとこらしい。



で、ボクは、今回の実力テスト、・・・・なんと、5教科合計で400点を超えた。

・・・まぁ、今回は出来すぎ。いつもは330点くらいだ。



・・・・・成績が上がってきていた。


狙っていたのは 下郷高校 だった。


3年生になって、最初の成績が250点といったところだったからだ。


大学には行きたいって考えていた。

・・・だから、なんとしても普通高校に行かなきゃなんない・・・・その一番低いレベルの高校が 下郷高校 だったからだ。


でも最近は330点前後まで成績が上がってきていた・・・・それでも、330点から上には、なかなか上がっていかなかった。


小学校高学年から中学校1年までの、家のドタバタが響いていた。


どうしても勉強で「抜けてる」というか・・・・わからないところがあった。

それがネックとなって、伸び悩んでいた。



机の上に 88点 の数学のテスト。


なんだ?どーした??? 何があった・・・???・・・わかった、誰のをカンニングしたんだ・・・????


「窓際族」の連中が騒いでいる。

・・・・ひとり、我関せずって態度の紺野。・・・・どーでもいいって顏だ。


「窓際族」の連中は、一番成績が良いのでも南原の350点といったところか、・・・・そんな中で、今回のボクの「400点超え」は、そりゃ、大騒ぎだ。


いつもは、せいぜい330点ってのが、いきなりの急上昇、奇跡の展開だ。そりゃ大騒ぎにもなる・笑。



「おおーーーカズ、すっげーな!!」



関川がボクのテストを見て言った。満面の笑顔だ。


「ありがとう」


ボクも笑顔で返す。



・・・・そうなんだ。

関川に勉強を教えてもらっていたんだ。


ボクが本当に行きたかったのは 中場高校 だ。

さすがに3年生・・・授業も受験勉強一色になっていく。成績も上がってきた。

それでも330点から伸び悩んでいた。


関川は成績優秀だ。

とーぜん、狙っているのは 上沢高校 ・・・そして、特別クラスだ。


関川の場合は、合格するのは当たり前だった。・・・・問題は何番で合格するか、だった。

1番で合格して、新入生徒代表の「答辞」を読むことが目標だった。



ある時、そんな関川に、わからない問題を質問したのがキッカケだった。


「それならウチに来いよ」


ってことになり、今では、一緒にテスト勉強をするようになっていた。


大人の教師より、成績優秀な同い年の生徒に習った方が圧倒的にわかりやすかった。

それに、やっぱり、野球部エースは伊達じゃない。

話すこと、教えることが上手かった。


関川には・・・・いや、関川だけじゃない・・・・生徒会長の長田もそうだけど、由緒正しい「地元名士」には・・・・なんだろう・・・・ヒトを惹きつける、そして率いる何かがあった。


同い年なんだけど、関川には、素直にモノが聞けた。・・・・なんだか、兄貴といっていいような雰囲気があった。


・・・・これが、地方の由緒正しい「地元名士」の人間力ってやつなのかもしれない。



「どうだった?」


同じ「窓際族」の紺野に聞いた。


「どうって・・・??・・・・なーーーんも変わらんわーーーー」


どーでもいいわーーーー  んな感じで答える。


・・・・本当に変わらないんだろうと思う。・・・・ってことはトータル300点ってとこか・笑。

それでも、別に困ってるような感じでもない。

紺野が狙ってるのは 下郷高校 だ。


「受験」のことなんか考えてないんだろうな・笑。

たぶん、ギターのことしか考えてない。

早々に 下郷高校 と決めてしまい・・・・そこなら落ちることもない。


紺野が勉強してるのを見たことがない。


音楽室でギターを弾いてるとこしか見たことがない。

教室でも、気がつけば「エアギター」を弾いてる。



小柄で眼鏡をかけて卓球部・・・・

「窓際族」・・・・その言葉がピッタリだった。



・・・・・でも・・・・紺野も由緒正しい「地元名士」の御曹司なんだけどなぁ・・・・・笑。


なんたって親父さんはPTA会長だ。


それも、小学校、んで中学校と。


実は・・・・由緒正しい「地元名士」ってんなら、紺野の家が一番じゃないのか‥‥?笑。



マズイぞ紺野。

大丈夫か紺野・・・????笑。



我関せずで、紺野は、今日も音楽室でギターを弾く。




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