_十四

「しかし、この方法はあまりに危険だ。前例が私しかいない。それに、私の予想では、もう一人必要だ」

 クオンだという男は、なにかを言い続けている。

「もう一人必要なのだが、私からお願いすることなんてできない。命の保証が全くできないんだ」

 生贄、きっとそういうことの話をしている。

「私で良ければ、力になりましょう」

 ヤオさんが立ち上がった。しかし、クオンだという男は、それを宥める。

「いや、すまない。こんなこと口にするんではなかった。まさか、いや、忘れてくれ。これは仕方がなかったんだ。すまない。忘れてくれ」

「でも、可能性があるなら、私は命を捨ててもいいですよ」

 ヤオさんはキッパリという。

「やめてくれ、そんな風に言われると、気持ちが揺らいでしまう。ダメだ。こんなダメな親父と娘の私情に巻き込むなんて、ダメだ」

 しかし、ヤオさんの気持ちは変わっていないようだ。

「私、アイザさんのことが好きですよ。出合ってわずかですけど、かなり放って置けないんです」

 クオンだという男は、とうとうその場に崩れて泣いた。ひとしきり泣くと、立ち上がりアイザさんの上半身と下半身を近づけた。

「私も、君も、気持ちが変わらないうちに始めてしまおう。やることは簡単だ。ヤオくんは私を殺してから、アイザの上に載せるんだ。そしてこの植物配線の種をヤオくんが使う、そしてすぐに私とアイザに大きかぶさってくれ」

 クオンだという男が植物配線の種と、簡易採掘用の刃物を取り出しヤオさんに渡した。

「本当は、こんなことせずに植物配線から普通の人間に戻したやりたかったんだけどな。時間もなければ知識も足りなかったよ」

 そう嘆いていた。

「私、殺せないですよ」

 ヤオさんが震えている。

「わかった。ではできるところまで一人でやろう。じゃあ、また後で」

 そう言って間髪入れずに、クオンだという男は自分の首を掻き切った。そしてフラフラとアイザに大きかぶさった。

「ヤオ、かわいそうだから、深く刺してあげなさい」

 イトが助言する。ヤオさんは震えながらも刺し、動きが完全に止まった。

「じゃあ、行ってきます。どうなるか分からないけど、もし怪物になってしまったら、その時はよろしくお願いしますね」

 何かが吹っ切れたのか、ヤオさんは少しだけいつもの調子に戻った。イトが優しく頷くと、ヤオさんは植物配線をした。そして、死体の山に覆いかぶさった。

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