_十三

 イトは執拗なまでに赤いお面の怪物を刺している。

「もう、やめなよ」

「うるさい、うるさい!」

 すでに、元がなんだったの分からない。僕らの隣には、アイザさんが血だらけで倒れている。上半身と、下半身は残念ながら千切れていた。

 ヤオさんは座り込んで、憔悴しきっている。

「僕は、戦闘が終了したことを放送するように行ってきます」

 僕は、吐きそうになりながら、建物に戻った。

「アイザ、死んだんだね」

 ポーリンさんもボーッとしてしまっている。

「こんな状況さ。誰も恨まないよ。誰かが生きて、誰かが死ぬ。仕方がないさ」

 僕はなにもいうことができない。通信機から最低限の内容を告げると、また外に出た。ヤオさんも、イトも放って置けない。

 城に戦闘終了を告げる放送が流れた。日が沈む。しかし、誰もここを動こうとはしなかった。


 ラム・シュウが建物から出てくる。目を覚ましたようだ。僕らの惨状を見て呆然とし、叫び声を上げた。

 しかし、誰に対しても怒るようなことはせず、また建物に戻っていく。

 あたりが暗くなると、車のライトが僕らを照らした。車は僕らの手前まで来て停まった。中からはキープリンが降りてきた。

「そうか。そうか。死んでしまったか」

 キープリンはじっとアイザさんを見据えている。

「アイザは、いい奴だったか?」

 そんな言葉を空に投げた。

「もちろんですよ」

 今まで、ずっと座り込んでいたヤオさんが返事をする。

「そうか」

 キープリンは涙を流した。

「娘をなくすとは、こんなにも辛いんだな。植物配線をしたその日、もう私の娘ではないと、そう言ったのに、全く、それは強がりだったんだな」

 キープリンがよく分からないことを口にしている。

「実は、アイザを蘇らせる方法があるんだ」

 その言葉は、あまりに衝撃だった。

「そんなこと、できるわけないでしょ」

 イトがイライラしながらいう。

「いや、できるんだ。実際、私は蘇っている」

「キープリンさんは一度死んでるんですか? いや、信じられない」

 僕が口にすると、キープリンは首を横に振った。

「違う、違うんだ。娘が死んだ今、隠す必要はもうない。私は、クオンだ。キープリンはもう、この世にはいない」

 なにを言っているのか話からわからないが、その目は真剣そのものだった。

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