_三

 翌日、まだ日が昇らない時間にみんな起こされた。僕らは広場の近くに車を止めてその中で眠っていた。

 窓を叩く音が聞こえる。

「どうした?」

 ラム・シュウが頭を押さえながらドアを開けると、スーチライトの従業員がひどく慌てながら声を荒げた。

「東から謎の生物が来てます」

 その言葉を聞いてから、顔つきが変わる。

「東? とにかく乗って。場所を教えてくれ。ヤオくん。寝起きで悪いけどすぐそこに向かおう」

「へっ、あ、えーと、かしこまりました。行きましょう。東、でしたよね」

 車が急発進した。体が揺れる。イトはまだ寝ていた。


 ポーリンさんか営む温泉の向こう、城の外れには一番高く細い建物が建っている。他の建物とは違いアスファルトや鉄骨がふんだんに使われている。

 その入り口では、普段からその建物で周りの監視をしている作業員が待っていた。

「お待ちしてました。こちらにどうぞ」

 車から降りたラム・シュウはすぐに中に通される。

「ユアンくんも来てくれ」

 僕も慌てて車から降りる。そして一度も止まることなく建物の中に入り、エレベーターに乗り込んだ。

「様子は?」

「はい。東から謎の生物が接近してきています。数は三つ。方向に変化がなければ今日の二十時にはここに辿り着きます」

 エレベーターが止まる時の嫌な重力は、なんど味わっても慣れない。

 出るとそこは様々な電子機器がある部屋だった。いたる所で光が点滅している。

「どこから見られる?」

「は、こちらにどうぞ」

 そこには片手で持てるほどの大きさの画面があった。すぐ横で一人の作業員が、机に半分埋め込まれた赤いボールを操作していた。ボールは大人の拳ほどで回した方向に画面の映像が動く。どんな操作をしているのかわからないが、拡大や縮小もできるようだ。

「これか。ユアンくんはどう見る?」

ラム・シュウの顔が画面の光で青白く光っている。僕も画面を覗き込んだ。

「僕が知ってるのと似ていますが、違います」

 そこに映っていたのは、人形のツタではあった。しかし、お面が違う。顔の真ん中からきゅうりのような棒が飛び出していて、真っ赤だ。

「危険だと思うかい?」

「はい」

 僕は震えていた。必死に堪えてはいるが、それでも震えている。

「防衛作戦だ。相手がどう出るかわからないが、ただで待ってるわけにはいかない」

 仄暗い、青い明かりが、だんだんと黄色い光に変わっていく。朝になったのだ。しかし、清々しい気分とはほど遠い。

 画面の中では三つの影が、心臓が脈打つリズムで、飛び跳ねながら近づいてきていた。

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