2023.12.08 母娘喧嘩
「夕飯作れないなら作れないって7時くらいでLINEか電話できたよね?」
「仕方ないでしょ」九時半。嫁さんは謝らないスタンスで娘ちゃんに続けた。「残業に確定申告とか部費の打ち込みがあったんだから、それにパパと息子くんは夕飯食べたんでしょ。一緒に食べれば良かったじゃないの」
肉とモヤシを炒めてサラダと夕飯は済ませていた。肉は男二人が全部食べたのでモヤシで食べろと聞こえる。
「ママが帰ったら一緒に食べるってLINEしてるし」まるで娘は腹がへると爆発する感情メーターを気にしてるようだ。
「だいたいサッカー部も源泉も私とは関係ないよね。忙しいのは学校と教習所とバイト行ってる私への理由にはならないでしょ、認めなよ!」
「……で、いまから夕飯いるの?」
「むっかー、もうこんな時間から夕飯なんか要らないよ。太るしパン食った!」
ドアを叩きつけて二階へ行く娘ちゃん。爆発したというか、さっさと終わらしたいから爆発させたのか。不穏な空気になったが正直、関わりたくない。
関われば俺のせいになってしまう。とも言っていられないので間をおいて娘ちゃんの部屋へ様子をみにいく。
「夕飯食べなくてダイジョブ?」
「……」
「うちの自慢の娘ちゃんは正しいよ。うちの名字を名乗ってる人間では一番に価値があって頭がいいだろうね。この前あった親戚たちもひっくるめて」
「……ちっ」
小さな炬燵に座り、スマホを見つめたまま微動だにしなかった。
「小学校のときだっけ」俺は続けた。「太陽みたいな君が好きって詩か作文で賞を貰ったよね。あの日から先に紙面デビューした娘ちゃんはパパより賢いって気がついたんだよね」
「……はや」
「それから夫婦円満の秘訣とか休日のプランとか普段着のコーディネートとか、一般常識も、読めない漢字も全部、娘ちゃんがパパに教えてくれたよ」
「要点を言って」
「ほら、それだ!」娘ちゃんは眉をあげて俺をみた。「そうやってすぐにアドバイスしてくれるんだ。だから好きなんだよな、ほんと」
「ふふ、でもママは嫌い」娘は重たそうに口をひらく。「パパにばっかり家事やらせるし、私のこと気にしてないし、息子くんばっかりだし、謝らないし、バカだし」
「娘ちゃんより自分が頭悪いってことを認めたくないのかもね。パパは8年前に気づいたけどさ」
「ぶっ(笑)」
「ママもパパくらい馬鹿なら良かったけど、それじゃ家庭円満にならないもんね。仕方ないか」
「うん。仕方ないよ」
「明日は仲直りするわ」
「ああ、そうしな」
何かやっぱりパパのせいになって解決したような気がするのは、どうしてだろうか。まあ深く考えることなんかどうせ出来ない頭なんだ、この脳ミソめっ。
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