2023.04.28 受け売り説教マン
『俺はチームが良くなるために進言していただけだよ。なんでブロックされなきゃならないんだ?』そういったのは元チーム副団長ピータさんだった。
身長はあるが痩せた体に長い黒髪。レア物の日本刀は簡単に手に入るような代物ではない。最強装備を見ているだけで手強そうだった。
チームメンバーのサティは副団ピータを連れて俺を呼びつけた。今さら話す筋合いもないが、マメさんとセッちゃんにブロックされた事実は彼を苦しめていた。
サティはピータと気があうようだが、チームには残ってくれている。中立で誰とでも交遊したいらしく、ピータの話は勉強になると言ってたこともあった。
『何でこうなったのか知りたいだけなんだ。さすがにブロックされたのは堪えたからね』
『本人たちとは話せないの?』
『IDで特定はしてるけど、話す気はないだろ。勝手にチーム辞めたマメさんのほうが、どんだけ自分勝手かわかるだろ』
『それで顛末を聞きたいわけだね。マメさんは傷ついてたみたいだけど、どんな進言したのか、ちょっと教えてよ』
『傷ついてたのは他のチームメンバーだ。話してたり誘われたりするのは、いつもリーダーの気に入った固定メンバーだけ。挨拶すらしないでメンバーを放置して、何がリーダーだよ』
『それは間違ってる』
『ヒロさんは他のメンバーが輪に入れずにいて傷ついていても構わないって思うのか。どこが間違ってるんだよ?』
『まず、もっと優しくいわないと』
『……あ、ああ』
『輪に入れずに苦しむのは、何処にいったって同じだよ。頭の悪い高校に入って話が合わない場合は、誰のせいだろうね』
『……』
『頑張って頭の良い大学に入ったら互いがリスペクトしあっていて、スクールカーストなんかないし、話題もあって楽しめる。誰かのおかげかなんて思わないよね。自分のおかげだから』
俺は、ほとんど18歳の娘ちゃんが言ってたことと同じことを言っていた。苦労して手に入れた現実を誇りにすら感じた。
『……』
『マメさんは戻ってくるけど、ちいゴリさんは無理だよ。リーダーが辞めたって聞いて、無責任だとか、こんなチーム解散しろとか、暴言に近いこと言ってた。なんで新人がそんなって思うと、辞めたピータさんが愚痴を話したからじゃないかなって思ったんだよ』
『お、俺はリーダーから新人を任されて迷惑していたんだ。こっちはもう部外者だっていってるのに、放り出すわけにもいかなかった』
『言い方とか、見た目もそうだけど、ピータさんは影響力があるんだと思うよ。こっちも声だったら震えてた。字で良かったよ』
『お、おう。そうか』
新人の〈ちいゴリ〉はチームに入って放置されたことに腹をたてていた。先に辞めたレナさんと三人で別のルームをつくり、撮影会のようなシステムを紹介していたんだそうだ。
音声チャットは禁止のチームだったが、辞めた二人がキーボードの遅い〈ちいゴリ〉とやり取りするのには便利だった。
恐らく〈ちいゴリ〉は夜の仕事をしている粘着質なタイプのリアルな女性か。あるいは本当に中学生のような餓鬼んちょのイメージ。
戦闘ゲームよりキャラクリを楽しみに来ていたようで、しっかりチームの説明をしていなかったのも問題だったのかもしれない。
探しても見当たらない場所、撮影ルームはパスワードをいれないと出会うことが出来ない場所のようだ。
以前のすれ違いが起きた謎はとけた。ピータは新人を奪って新しいチームを作ろうとは考えていなかった。
『理不尽すぎて傷つくレベルだよ。それだけ伝えてほしい。俺からはそれだけだ。チームのリーダー頑張ってくれ』
『うん。またどこかで』
誤解は溶けてピータは去った。サティはきちんとしたルールを作ったら、同じようなことは起きないんじゃないかといった。
『チームで一度、全体会議をしたらいいと思うんだけど、土曜日の10時でどうかな』俺はぼやく。マメさんからの説明も必要だと思った。
このままだと辞めるタイミングが見当たらない。ガッツリとゲームをやってるチームの人たちにしたら、ちょいちょい繋ぎの俺がリーダーなのは不自然だと思っているだろう。
『ログインメッセージに集合時間と場所を入れておくから、今後のルールはサティさんが考えてくれない?』
『はい。チーム規約作ったら、メールのほうで送りますんで確認してもらえますか?』
『うん……』
半分は冗談のような申し出、この無茶ぶりの要請をサティは楽しんでいるように感じた。他のチームメンバー、マメさんと会議までに話をしておかないとならない。
〈まだ続く(笑)〉
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