2022.04.24 変化する生活

 息子くんが高校に通い始めて、サッカー部に入部。ハードなうえ教室にもまだ友達がいないのが辛いようす。


 娘ちゃんは受験生になるので、ピアノ教室を今月で終わりにする。勉強しているのか、休日は昼までよく寝ていることが多い。


 嫁さんのお義父さんは、初期の肺癌らしく、夜中によく嫁さんと電話で話している。


「おはよ」と娘ちゃんが起きてきたのは十三時半を過ぎていた。息子の早朝からの部活が終わって帰宅する時間だ。


「休日の楓ちゃんのスケジュール、やばくない? 朝十時:まだ起きない。十一時:まだ寝れる。十二時:まだまだ寝れる。十三時:もう少し寝れる。十四時:昼食。十五時:食ったから寝れる(笑)」


「うるさいな」


 俺も上司が定年退職するので、仕事量が増える。取引先も減っているので営業の補充はできないと言われ、雑用をやってくれるパートさんも腰の手術で一ヶ月休んでいるというのに覚えることが多くて愕然としている状況だ。


 ある夜には、赤字会社で仕事を任されるってことは、これからネチネチ言われる立場だってことで、引き継ぎするタイミングは相当やばいと説明した。娘と嫁さんに。


 去年は保証金が国から出たけど、今年は出ない。つまり俺が任されたとたんに赤字が浮き彫りになって、責められることになるのは誰がみても明らかだから。


「はあ……」とため息を漏らす嫁さんは、目覚ましテレビの占いで双子座が最下位だったことにストレスを感じているのだ。


「忙しくて疲れたから、お昼ごはんは松屋か、かつ屋でなんか買ってきてよ。でも娘ちゃんは肉が嫌いだから焼きうどんでも作るわ。三人分のお金ね」


「占いなんか信じなきゃいいのに」と娘ちゃん。「忙しいのはみんなだからね。今月は毎日予定入ってるし、お祖父ちゃんとこ行くのに友達との約束も断ったんだよ」


「俺はサッカー部あるし、レギュラーになりたいから行かない」と息子。冗談半分でジャニーズに履歴書を送ってみたいと言っていたが、電話番号の欄に郵便番号が書いてあるというボケっぷりに嫁さんが突っ込みを入れている。


 腹筋も割れているので調子に乗っている。新しい高校で、イケメンと呼ばれ地元での扱いとキャラが変わっているみたいだ。オシャレにも気を使っているようなので、実際モテているのかもしれない。


「うるせーよっ! モテねーよ。だったら男10でディズニーなんか行かないって。〇〇なんて女2男1で、ディズニー行ったんだよ」


 みんな生活の変化に疲労が溜まっているみたい。新しい制服に新しい教科書。同じ中学からは一人もこの高校には行っていない環境。俺も変化は嫌いだけど、全てが変わるなんてことはないと思ってる。


「みんな忙しいみたいだから、言っておく」と俺は言った。


「たしかに変化はきつい。でもどれほど忙しくても、まったく心配することはない。不安に思う必要もない。人間は失敗するのは当たり前だから凹む必要もない。占いなんかより、スケジュールとか計画を信じればいい。失敗しないための厳密な計画でことに臨めば、失敗は減らすことが出来るから。受験もそうだろ。どう、楽になった?」


「潰れそうな中小企業に入ったパパに言われても説得力ないけどね。なんだって計画どおりには行かないもんだよね」と冷静な娘。


「……響かなかったか」


「他に言うことないの?」


「さっき、言おうとして止めたことならあるけど。ああ、でもやめようかな」


「いいなよ、いいなよ、言っちゃいなよ!」


 娘も息子も俺に注目していた。なんか説教っぽいことをいうつもりでもなかったが、少しは響いたのかもしれないと焦った。


「このズボン、生地が薄くて○んこの形が見えてない? あとさっき、颯ちゃんがおんなに2って言ったとき、オナニーって聞こえてビビっちゃった」


「…………ぱ、パパ」


「……ドシモ!?」


「……」


「「アハハハハハハハハアハハハハハハハ!!!!」」


 実際問題、人の考えていることなんてこんなものだ。だから笑っていればいいよね。ちょっと下ネタは嫁さんに怒られたけど。



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