2022.01.30 呪術廻戦0

「予備知識なくてもホントに面白いの?」


「大丈夫だよ、はじめの読み切り前日譚だから、ここから見る人も多いと思うよ」


「お、暗くなってきた。始まるね」


『闇よりいでて闇より黒く……その穢れを禊ぎ祓え』


「……と、とばりか(笑)」


 娘ちゃんと二人で久しぶりの映画館、『呪術廻戦0』を見に来ております。もう高二ですので中々一緒に出かけるのはハードルが高くなってます。パッパと出かけるのを友人とかに目撃されるのは嫌なんでしょうね。


 まあ、いいんだけど。まともな格好してくれれば――ジャケット着て、コートとか仕事行くみたいな服装になってしまいます。ちゃんとヒゲ剃って髪をセットして、お金も持って。デートですね、これは。


 チケットを取ったのは二つ離れたイオン・シネマ。楓ちゃんもオシャレな格好で化粧を始め、付け毛でロングになっていました。そして鏡を見たり自撮りしたりするたび「わたしって可愛い!!」と自画自賛してます。


「ぱっとみ、フウちゃんて分かんないかもね。変装みたいじゃない?」


「厚化粧が出来るのは若い時だけなのよ。年取ってから厚化粧だと変だと思われるでしょ、今のうちに楽しまないとね。変装っていうか、パパ活だと思われたら困るからね」


「本物のパパ活だけどね(笑)」


 我が家では洗面所が奪い合いになるので、エアコンの前にも百均の鏡を二つセットして、櫛やスプレーを壁に掛けてあります。温かい場所なのでキャンプ用の椅子をだしてスマホでヨムヨムしてるんですが、まさか二時間も化粧している娘ちゃんを見せられるとは思いませんでした。


 見事な変身というか、形態、状態、生態が変わっていくんですね。もう大人の女みたいになってます。幼生から成体に移行していく十七歳、来年には成人なんですから子供でもないんでしょうけど、昆虫でいう『変態』です(笑)。


「すでに上映時間並みに長いけど、お腹空いてこないの?」


「んー、もうちょいかな〜。いいじゃん、もう二度と娘と二人でデートなんて出来ないかもしんないんだから(笑)」


 こういうこといいます。この年齢になると、ふと寂しくなりますね。もともと寂しがり屋ですけど、年齢が深く関係してるかと。


 生物的に死を意識し始める段階に入ったのではないかと思います。死ぬ時は一人だから、慣れておけよっという知らせです。


 まだ死ぬわけでは勿論ないですけど、成長がとまって、髪が抜けて、歯が抜けて、老化のほうに向かっているっていう転換期です。


 こっからが人生だ、とか不屈の精神だとか「諦めないで(真矢ミキ)」なんて言っていても体のほうは、これ以上成長しませんから。これ考えると余計、寂しくなりますけど(笑)。


 そして昼を食べたり、喫茶店にいったり、学校で使う膝掛けを買ったり、ガチャガチャをやったりプリクラを撮ったり、お菓子やジュースを買ったりして、ついにとばりが降りたのです。


 映画は面白かったです。『愛ほど歪んだ呪いはないよ』『失礼だな、純愛だよ』なんて名言は息子くんのネタバレで聞いていましたが、確かに泣けました。号泣までいけますよ、寂しがり屋ですので。


 気になったのは呪術は多種多様ということ。術師の数だけ祓い方があるというお話ですが、流石にそんなには無いでしょ。あったら困るでしょ、ほとんどの人は普通に刀で戦ってたじゃん。


「だったら百鬼夜行の戦闘が始まったら、急にエロ本読み出す術師とか、うどん粉こね出すピザ職人とか、素っ裸になってシャボン玉作るやつとか出てきちゃうでしょ。なんの集まりかもわかんないよね」と娘ちゃんに聞いたら。


「ジョジョでシャボン玉の人いたし、キルアはヨーヨーで戦うし、ジーニアスはけん玉使うんだよ。そういうのが一番カッコいいんだよ」


「カッコいいんかい!」


 いやあ、映画って楽しいなと感じました。エンドロールは最後まで見てくださいね。長いので帰った人がいましたけど、最後の最後に少しおまけシーン入りますよ。


 目の前が明るくなると、俺は指を二本立てて娘ちゃんをみました。にこりと笑って「ばぱが帳、解除してくれたんだね」と言いました(笑)。


 体は年齢で変化していきますが、多様性があって楽しいこともあります。ええ、俺も娘ちゃんも立派な変態です。






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