2021.11.15 肉離れと親離れ
『体育祭で肉離れをしまして、いまは冷やしてテーピングしています』
「ご、ご迷惑おかけしてます」
『いいえ、今日は友達と一緒に帰ると思いますが、ご家庭でも様子を見てください』
「はい、ありがとうございました」
午後に中学の担任から携帯に電話があった。聞くところによると中学三年の息子くんが肉離れをしたそうだ。
あれは痛いらしい、そしてスポーツ選手もなるので運動不足からなるものではないらしい。運が悪かったのだろうか。
夜中に足がつることはよくあるが、手の施しようがないので治るまで我慢するしかない。あれと同じかそれ以上か、とにかく時間が治す系だと思っていた。
忍耐、それは人生で一番大事なこと。いつまでも辛いことは続かない。痛みもずっとではないであろう。
苦難には波がある。忍耐を続けることで、思わぬ突破口が開けることはよくあることだ。耐えるのだ、息子よ……とか思っていた。
嫁さんからLINEで連絡がきた。「車で病院に連れてってあげて」と、レントゲン撮るから早退してこいという。塾に行くなら送ることも考えておけと。
えっ、肉離れってそんな感じなの? 父親失格だったかな。全然そんな感じにはならんと思っていた。
上司に報告すると『ホワイトボードを外出にして帰宅していいよ』とのお言葉を貰えたので感激した。
実際、なんてことはなかった。車で待つこと一時間。電気治療をして、一週間は体育を見学にしてくださいといわれたが、塾には自転車で行けるといいはる息子。せっかくだから乗っていけよというが、断りおった。
肉離れ、ならぬ親離れ。少し寂しい気分だが、走っているときじゃなく、旗を持って立った時になったという状況もあったのかもしれない(笑)。大したことねーといいはるのだ。
「グッバイ、ミート君だね」娘ちゃんは言った。「バイバイ、ニック君」とも。
「うん……バイバイ、マイベイベだ」言葉の意味わ分からないが、ニュアンスは感じた。
「もっと甘えて欲しい気もするんだけど、塾もいくって偉ずぎるよね。受験生だからしかたないけどさ。いつか楓ちゃんも進学とか結婚で出ていったら寂しいんだろうな、パッパ」
「彼氏できないから、出ていかないけどね」
「心配しないでも出来るでしょ。パパよりカッコ良くて、頭のいい男性は世界中探してもなかなか居ないだろうけど(笑)」
パッパと結婚したいと言われたことは何度もあるが、いつの間にか臭いし汚いから向こうに行けと言われた回数が追い越した。
「えーっまぁ、その条件だと人類の男ほとんどだね。楽勝な気がしてきたー!!」
「式場で少し泣くだろうね、パパは……」
「ふふ、少しじゃないくせに」
「「アハハハハハハ!!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます