2021.11.06 カレーライス
「またカレー?」
「普通は子供ってカレーを喜ぶんだけど、楓ちゃん嫌いだよね」
塾から帰宅した娘は眉をしかめて嫁さんに言った。カレーに入っている肉が嫌いという我がままな娘。
それを溺愛する嫁さんは「なら肉入れないようによそうし、なんなら簡単な鍋を作ろうか?」という。
「カレーうどんにしてくれない?」
「ああ、うどん切らしてる」
「えーっ!」
今週は家族が、みな忙しかったようで小さな不満が溜まっているのだった。かくいう俺も展示会や伝達事項のストレスで胃のあたりが痛んでいた。
販売員のAさんがBさんに〈覚えてほしいリスト〉なる写メを俺に送ってきたので、そのまま転送したのである。だって、包装とかPOS締めとか現場で販売員どうしでやってもらうやり取りだから。
それが大変――この字はAさんの字だから、どういうこと? となって写メをそのまま送った俺が責められているのだ。くだらねーと思うかもしれないが女性っていうのは面倒なのだ。俺も犯した愚行を反省している。
他の店では、仕入れのセール品は在庫が分からないので注文をとらないでくれと言っているのに販売員の女性は注文をしてくる。
彼女の場合は「無いかもしれないが、あれば取り寄せ」といってお客を最優先に考えることが絶対的に正義なのだ。
だが会社は無駄な仕入れを許さないし、仕入先だってお客がほしいからって一枚や二枚を送ってくれるほど手間も運賃もかけてくれない。余分な仕入れはマイナスでしかないから、あるものを買ってくれとしか言えない。
説明が不足しているわけじゃないと思うのだが、探せる商品に対して「ありません、出来ません」とは言えないらしい。
ところが最終的に十枚位買ってもらうという好結果に終わり、悪いのはいつも俺になってしまうのだった。
問題はそこじゃないと思うのだが、女性はすぐに俺の人間性を疑ってくる。というより反論をしない人間を探しだして、痛めつけるのが得意な意地悪なのかと思う。もしくはストレスをブツけてあざ笑っているのかも。怖い怖い人種なのだ。
「がっかりしてクヨクヨしてどうしたんだい?」と俺は娘に言った。ある曲の歌詞だが、結局のところ女性に限らず、人間は話を聞いてもらいたい生き物なのだと思う。
「塾でカリキュラムが進んでないのを、えらく責められたのよ」と楓ちゃん。どんどん溜まっていく課題をテーブルに並べた。
「怒られたの?」
「うーん、怒るっていう感じでもないんだけどさ。講師の先生、こっちだって言いたくないんだよ〜って顔して、グチグチ言ってくる感じ」
「ああ……楓ちゃんは、こっちだって言われたくないんだよ〜って顔して聞きながら、頭の上では互いのスタンドが戦ってる感じか」
「「アハハハハハ!!」」
「あははは! 太陽みたいに笑う君が好きだよ。おうおう!」と娘は笑った。
「忍たまのオープニングの歌詞ってばれてたかぁ。パパは先にカレー食べるよ。普通の家庭じゃ週に一回はカレーライスがメニューに入ってるんだからね」
「海軍かよ!」
「「アハハハハハ!!」」
娘ちゃんは自分のツッコミ「海軍かよ」が家族皆にウケたのに調子を良くして、カレーを食べることにしたようだ。
歌の力、笑いの力は強大である。このあとも息子くんが加わり、更に歌の話題に。東京リベンジャーズのOP曲のイントネーションが難しすぎるという話題だった(笑)
「胸ぐっらを、つかまっれて〜強烈なパーンチを〜♪」
「違う!」
「胸ぐら―を、つっかまーれて〜強烈なパーンチを〜♪」
「違う!」
「胸ぐーらっを、つーかまっれって〜♪」
「違うよ!!」
「「アハハハハハ!!! 誰も歌えね―じゃん!!」」
その後も忍たまのOPを歌い出す子供たち。もう高校二年と中学三年なんですけど、ノリがいいんですね。歌うんです、食卓で(笑)
「ねえ、光GENJIってすごい古いよね?」
「息子ちゃん、光GENJIって知ってるんだ。かなり古いよ、平安時代じゃなかったっけ」
「「アハハハハハハ!!!」」
昨夜のカレーは完食で、お釜のご飯もきれいに無くなったのでした。めでたしめでたし。
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