2021.07.09 面倒臭いと思われている?
「窓あけたままTシャツ一枚で寝るのも怖い。パンツいっちょで寝ちゃうのも怖い。明け方寒さで足がつったり調子崩しそうになるじゃん。夜は暑いけどさ、朝はやばい。程よい丈の薄いジャージとか涼しい感じの半袖なかったっけ?」
「……知らんがな」
嫁さんは会話する気は無いといわんばかりにテレビガイドをパラパラと捲っている。別に聞いて欲しいわけじゃないが止まらなかった。
「昨日ね、隣の後輩くんが午前中ずっと寝ぼけ顔でウトウトしてて、話しかけたら目が真っ赤なんだよ」
「居眠りしてるんなら怒ればいいじゃん。ビシっと言ってやりなよ」
「いや……外で喫茶店でも行ってサボってくればって言ってやったんだけどね、はあ~みたいな感じで悪びれる感じもないの。こっちは忙しいのに隣で全然仕事しないやつ、イライラしちゃうよね」
「はあ、知らんけど」
「はあって、嫁ちゃんもそんな感じかよ!」
「……知らんがな」
他人の仕事に文句を言う立場でもないし暇な社員はどこにでもいる。自分がヤツの年齢のときはもっと必死に頑張ってたとか、職場で寝るなんてあり得ないとか。
そんなことを言ってしまえば、八つ当たりに見られるのが関の山だ。レベルが低すぎて親が叱ってるみたいになってしまう。付き合いきれないし関わる気もしない。
「ショックだったのがさ、デザイナーにネット掲載の商品説明コメント書いてもらうよう頼んだんだけど、中学生みたいな文章なのよ」
「へぇ、そんな仕事もやってるんだ」
正直、原産国とか素材とかJANコードとか細かいので老眼には酷な作業だ。若いものに全部やってもらいたい仕事だと思っている。
「抗菌防臭素材を使用した綿とポリエステルを使用した合繊のアイテムですとか、普通に書いてあるの。使用したって何回使用したか聞きたくなるよ。○○にも○○も○○や○○にもお薦めですとか、読んでると頭がいたくなるよ。にもに統一しろよっ、ファインディング・ニモかよ!」
「まあ、慣れてないんじゃない。知らんけど」
「そうかと思えばシンメトリーで網状のデザインが可憐ですとか○○ブランドらしいアイテムですとか、意味が分かんないの」
「やり直せーっていえばいんじゃない? 部下か年下なんでしょ」
「そこはさ、部署も違うからありがとうございますしか言わんけどさ」
「……言わなきゃ分からんがな」
「使う人の日常が少しでも快適になるよう願っていますとか、商品の説明文なんだから知らねーよって感じじゃない?」
「なんかパパちゃん、面倒臭いね。なんかイライラしちゃったの? 知らんけど」
「知って!」
「……し」
「知って!!」
「……し」
「知って!!!」
「……しっ」
「嫁ちゃんに知ってもらわなかったら誰も知らんじゃん、これ。だから知って!!!」
何をむきになっているのか知らんけど、という言葉を堪えた嫁さんはさすがに笑っていた。翌日ユニクロでカッコいい感じのステテコを買ってきてくれた。
もしかしてノーパンで履いてもいいのか聞いてみたら、やっぱり「知らん」と言われた。
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