2021.07.04 全裸監督(18禁)

 山田孝之を見ているだけで面白いのに、2シーズン通してだれることなく魅力的なキャラと破滅的な展開が秀逸だった。


 脇を固める駅弁ラガーや顔射の三田村には笑うしかない。三田村の成長と淡い恋、トシとホステスとの微妙な関係などは、まさに大人向けな渋い展開で涙を誘う。


 山田孝之の本番シーン、喘ぎ声と暴力が超をこしているので家族と見れる内容ではない。イヤホンをつけてこっそり見なくてはならないのは仕方ないのだ。


 面白かった。日本近代史に間違いなく一石を投じる作品だ。やくざ、警察、権力、裏社会は我らの実に身近に存在していた。


 どこまでフィクションかは分からないがあの時代に生きていたと実感する。それほどAVに知識のない俺でも黒木香は知っている。


「誰も見たことのないもので世界をあっと言わせる」という村西とおる。「エロスで世界を変えてやる」「俺は俺の見たいもの、撮りたいものを撮る」といった主張。


 ベータがVHSに負けた理由など、エロが社会に及ぼす影響は計り知れない。麻薬以上の中毒性と大金がひしめく利権の世界で、自分たちの信じる本物のエロを探求する『愛』のドラマだったのだ。


 初期メンバーがちゃんとしたバランスで物語を消化して終わる見事な構成。ネタバレになるが敵対した仲間、トシは村西に銃を向けるが撃つことが出来ない。


 川田が落ちぶれた村西に事実を伝える砂浜のシーンでは胸が熱くなった。思い付いたからもう書いちゃうが、この友情を越えた繋がりは『走れエロス』といえる。いや、言わなきゃよかった(笑)。


 この作品を通して避けられないのは、真実の愛を作品として産み出すことは、奇跡的なことであり性行為そのものに他ならないこと。


 感動するや否や規制でパクられる西村。その巨大な警察を操る凶悪の存在、怖すぎるやくざ。その構造が展開を複雑で魅力的なものにしている。


 そもそも何故に規制があれほど厳しかったのだろうか。ライブドアがギリギリ、法の隙間を突いて利益をあげていたのと同じような感覚に思える。


 エアロスミスのLiving on the Edgeという歌を着信にしている俺だがedgeとは「ふち」「先端」のことで、"on the edge"で「ギリギリのところ、瀬戸際」という意味になる。とにかくそんな人生はカッコいい。


 ところで規制や利権絡みで消えていく作品は意外と多い。キャンディキャンディやみなしごハッチ、ちびくろサンボやジャンル黒ベェ。


 まいっちんぐまち子先生や妖怪人間ベムは、危なかったが大丈夫だったんだろうか。「おいら怪しいもんじゃないよ」と三本指のアップを突き出す怪しいベムは怪しすぎた(笑)。


 ハレンチ学園最終回やけっこう仮面、魔太郎やアシュラ、アトムやブラックジャックにも消えた物語があったと思う。エロ規制にはあまり詳しくないので作品が出てこないですわ(笑)。


 川田さんがヘアヌードの解禁を知って「時代が追い付いてきた。僕たちのやってきたことは間違ってなかったんだ!」と泣くシーンには不思議な説得力があった。


 法の庇護から外れた場所にある自由。誰かに縛られず、頼りもせず自分たちで決断して最後まで責任をおう。人はその結果こそが現実リアルだと感じるのかもしれない。



 


 


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