2021.04.25 ウォーキングデッド

 ネタバレで事件が起きるほどの人気ドラマ『ウォーキングデッド』を紹介しようと思ったが、友人との会話で既に失敗している。


「俺も見てるんだ。すごいよね、シーズン通して子供たちが成長しちゃってるもんね」


「どこまで見たの、○○○はまだ生きてる?」


「おいっ。ネタバレすんなって言ったよね。○○○死ぬんかい、まじでお前はもう喋るな」


「……ごめんな、本当にごめんな」


 このように、ネタバレに厳しい世界なうえネタバレ要素のあることしか話題にならないという真に孤独なホラーである。


 それでも今回この作品を紹介したいと思うのは、長期連載の法則が上手い具合に取り込まれていることを学ぶためだ。


 このループに入れば長期連載はそう難しくない。正直、邪道だしズルいと思うが視聴者や読者は複雑な物語にはついてこないのが現実。


 毎回エスカレートしてはいくがやってることは同じ。七人か八人位でチームを組みゾンビの溢れる街へと略奪に向かう。


 狩猟本能を満たすには略奪行為がセットだということを忘れてはならない。海賊や山賊を主役にすればゾンビを出さなくても略奪設定が出来そうだが、単なる殺戮集団になるか某人気漫画のような義賊になるしかない。


 各々が家族の為だったり、街に残された兄弟の為だったり、仲間の為、食糧、調査の為だったりと目的はバラバラで構わない。むしろ謎めいてよいくらいだし、同じ目的での共闘に価値が見込める。


 基本的には食糧か物資の略奪なので常に新天地を探索する必要がある。異世界的な要素を盛り込んだ特殊な舞台設定が必要である。そう、この設定が出来れば苦労しないのだ。 


 何度か略奪を成功させるうちに、毎度毎度拠点が襲われる。せっかく築いた拠点だが、チームが出て手薄なときに脆くも崩されてしまう。


 同じようなことをしている新たなパーティーとの遭遇。ショボいチームから国家クラスの組織まで遭遇する。順番は大事。


 手薄になった主人公チームは補強しながらまた略奪生活に戻り、物語は繰り返される。この無限ループに成長、恋愛、子育て、野心、陰謀、出会い、別れ等など、人生における全てともいえるテーマを盛り込めばよい。


 そして『力』を加える。権力争いや裏付けのある異能力とか伝説の武器とか。初めから強くて単独行動から始まる導入もよくある。


 長期連載されている異世界系はあらかじめ死別が用意されている。この繰り返しでメンバーが死んで入れ替わるというのもポイント。情け容赦なく必ず誰かが死ぬことで痛みと緊張感がうまれる。

 

 そんな設定だと思って日誌を読んでもらうともの凄くドラマチックになると思う。では、ゾンビの世界で希望を見るという気持ちで以下を読んでもらいたい。


『↓ウォーキング・ダッド』


 国道十七号線。


 目立たないよう日陰を選んで歩いた。ずっと誰かの影にいるのを耐えられないという人もいる。いつか光の前に立ち、自らの手で勝利や栄光を掴みたいと思う人もいる。


 組織にいるのは素晴らしい。それだけで学べることが幾つかある。俺は慎重に戦士の影から味方をサポートするタイプ。集団に紛れて身を隠し、今日をやり過ごすだけの人間。


 いつか光のある場所へ飛び出そうと思った。戦士や賢者の影にいるとき、意識せずとも影の外へと足を踏み出していたことがある。


 そこで初めて知る。呆然として意欲や生気を失うことさえある。光など何処にも無い。自分自身が、俺自身が夢や希望を持たない限り。


 かつては誰もが希望を持って生きていた。その影の中は心地よかった。目標や希望を持っている人間をサポートすることは重要な役割だ。


 俺に先を照らすような力が無いことを嘆いたこともある。光とは、自ら発するものではなく愛する人と共にあるものかもしれない。


 人生の伴侶を持てば花嫁を光そのものだと感じ、生きる目的を実感することもある。だが俺は自分のことしか愛せない人間がリーダーたりえるとは決してないと知っていた。


 子供たちには『風』の字を付けた。俺はどうも『闇』属性な気がしていたから。そして幼い楓香ふうか颯悟そうごは元気に風のように走り回った。


 義父はすぐに落ち着きを持った女性になるから木偏を付けるようにと言った。風を楓にしたのは正しかった。すぐに清楚で走り回らない娘に成長した。


 二人が家族にどれだけ喜びを与えてくれたか。父親にとって息子は本当に可愛いと聞いたが、本当にその通りだった。男の子はお喋りよりも運動が好きだから。


 だが一緒に遊んだり本気で狩りに行けば、息子はしばし嫉妬の対象になる。略奪や強襲をすればライバルや強敵にさえなる。


 なんせ父親はダース・ベイダーのような闇属性なのだから尚更だ。だが娘は……俺の愛する娘は『光』だと感じた。


 俺は人混みを掻き分けるように前に歩き出した。希望を失った人々の影はまったく居心地が悪かった。順番が回ってきたと感じた。


 はい。なんのこっちゃ分からない回になりました。仕事で矢面に立ちたくない俺が、家族のために会社に行くだけの話です。


 これがゾンビ世界だと思うだけで何か良くなりますよね……なりませんかね(笑)


 

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