2021.04.08 恋は雨上がりのように
四十五歳のファミレス店長と華の女子高生の淡い恋物語。特にJK側の片思いパートはコメディ要素が強くて大変面白い。
映画「恋は雨上がりのように」は大泉洋と小松菜奈主演のラブストーリーである。アニメに忠実だが洋ちゃんが笑えるので映画版をお勧めする。水曜どうでしょうもネトフリで見れますね、今さらですけど。
まさか俺みたいなおっさんを女子高生が好きになるわけがないだろ、という常識的な発想がひっくり返る秀逸なシナリオ。
そうか、あの病院帰りにファミレスに寄って二人は会っていたんだ。みたいな発見とキャラの魅力にテンションがあがる。
小説家を目指していた洋ちゃん(バツイチ子持ち)は、いつしか夢を諦めていた。あいみょん似のJKもアキレス腱断裂により走ることを諦めていた。
陸上部から離れ、ファミレスでバイトをしていた。互いを知るうちに忘れかけていた情熱が沸き上がる。まあ良作です。
おっさんは若き日に見続けた純文学への憧れとかけがえのない思い。女子高生はおっさんから人生を学び、疎遠になった陸上部の親友と仲直りをする。
二人は雨のファミレスで雨宿りをしていただけだった。それは幸せな時間だった。結果、恋はさほど進展せずに晴れた空に飛び出していくような壮快な終わり方。
完全に両思いでありながらも、彼女を応援し背中を押すおっさんの姿は、哀愁があって格好いい。まるでコロナ禍の自粛期間のような虚しい雨宿りを精一杯楽しんだような感覚。
数年後には恋愛もありえるだろうが、もっと大きな運命的な人間同士の結び付きのような何かを感じずにはいられない。
珍しく嫁さんも最後まで見ていた。今日から高校二年になる娘ちゃんは、ドラマチックな友情物語に何か言いたげだった。
「今年は友達作りたいんだけどね……」
「彼氏じゃなくて? 出会いはあるんでしょ」
「部活やめちゃったしバイトも来月には辞めるし、ピアノ教室は個人レッスンだし」
楓ちゃんはかなりの美少女なので性格が世紀末カタストロフィ伝説なのさえバレなければ友人や彼氏も出きるはずだと思っていた。
「サッカー部の男子がさ、学年の女子にランク付けしてるのよ」
「よくないね、そういうの」
リア充の高校生がやりそうなこと。冗談でも不細工ランキングみたいなことが実際にあるとしたら絶対に許せない。
きっと性格が糞ランキングか、本性は悪魔ランキングか、人を傷付けるくせに秒で仲直りをしようとする気分屋ランキングにでも入ったのだと思った。
「いやいや、私と◯◯ちゃんの二強で争ってるだけの可愛いランキングだよ。ブスランキングとかバカランキングじゃないよ」
「ほっ……なら分かる。よくないけど、そいつらがトップランカー総なめだもんね。クズ人間ランキングなら」
「うん。それでマラソン大会の時とか、私のこと名指しで応援してくるわけよ。そんなわけで友達出来ないんだわ」
「……はあ?」
この告白は『自慢』でいいのだろうか。男子にアイドル扱いされてると言いたいのか。楓ちゃんの性格が地獄の黙示録だと知らない生徒たちにチヤホヤされるのはカウントしない決まりだけど。
「まだ二年でどういうキャラでいくべきか、決めかねてるのが問題なねよね」
「どゆこと!?」
「あはは。クラス分けの自己紹介とか、緊張するよ。好きな食べ物は焼きうどんです、とか言えないし」
「……こいつ」
娘ちゃんは、極度に緊張していたのだ。何故なら、元々友人の少ない彼女にとってクラス替えで『ぼっち』になる可能性は非常に高い。
雨宿りしてる時間は長く感じるものだ。動きはじめた社会に華々しく飛び出したい気持ちはさっきの映画でも感じていた。
「楓ちゃん、聞いて。パパにも自己紹介の正解なんて分からないよ。でも心配することはないんだ。ランキングみたいに、やっちゃいけない事はあるけど挨拶なんて上手くいかなくても気にしなくて大丈夫だよ」
「やっちゃいけない挨拶ってある?」
「ああ、あるけど」
元気だせよ。背中が曲がってるぞ。俺はDJのように右手を耳に、左手を擦るように前に出した。さあ、見ろ!
「チェケラ! 自己紹介をラップでやるぜ! 私はフウカ! 怒ればフンカ! こころはフカフカ! 荒れた時代の景色はフウカ! オッイエエエッ♪」
これは絶対にやってはならない悪い例としての反面教師である。もちろん歌った後に、やりきった感を出すのも忘れてはならない。
「…………ヒュウ」
「……」
そして拍手を求めたり、天からフレーズが降りてきたと囁けば最高の思い出の完成だ。自分に突っ込みをいれた日には場を凍りつかせること間違いなし。
「「アハハハハハッ」」
「やったら責任とってくれるんでしょうね」
「えっ、もしかして気にいった?」
「んなわけないだろ、アホすぎ。人生棒に振るわ。行って来まーす」
娘も息子も、今日は新しい教室に行き新しいクラスメイトと出会う。少し緊張しているけど笑顔でいてほしい。雨上がりの空のように。
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