2021.04.04 弱キャラ友崎訓

 ネトフリはどうしてアニメばっかりお勧めしてくるんだろうとは思っていた。バナナフィッシュや宇宙そらを駆けるよだかは良作だったけれども。


 アマゾンのお勧め機能と同じように子供たちがアニメばかり見るので関連作品を紹介してくれるのだ。すごい時代になったものだ。


 そんなわけで流し見していた『弱キャラ友崎くん』(12話)を見終えた。主人公の友崎がズマブラに似たゲームでスクールカーストのトップに君臨する陽キャ、中村をボコるところから物語は始まる。


 なにやらこの格闘ゲームでは日本一強いらしいのだ。ネット対戦出きる時代だと一般高校生が『ななし』というエントリーネームで有名になることも実際にありそう。


 陰キャの主人公、友崎くんは『負けたのをゲームのせいにするな』という。ゲームとはいえ場を制する駆け引きのスキル、また操作には絶え間ない努力をしてきたのだろう。


 ランク二位の『ノーネーム』と二人で会うことになる友崎。なんと正体は同じクラスの完璧ヒロイン日南葵だった。


 人生は神ゲーだというヒロインは友崎くんに攻略法を指南することになり、容姿や会話スキルやらをぐんぐんレベルアップしていき友崎は陽キャになりましたというグリム童話。


 こんなにも努力を費やしてきた主人公の自分語りとヒロインの説教、なにもかもが全く心に響かない物語が今まであっただろうか。揺れずに安心して見れる希少な作品だ。


 そもそも格闘ゲームで一度も負けないなんて可能なのだろうか。日本一が二位に負けることが一度も無いゲームが存在するかという疑念が沸く。


 反射速度の異常発達か予知能力か、何らかの理由があると思ったが無い。またヒロインの人生はゲームだから真剣に攻略して陽キャになれるという当たり前の説教。


 1日に2回女子と会話することや、陽キャを三回イジれなどの課題ミッションをクリアしていく過程には僅かに期待が膨らむ。


 ボイスレコーダーで自分の話し方を改善したり単語帳で話題を暗記したり。背筋を伸ばしワックスで完璧な髪型に変身したり。


 何とか生徒会選挙や合宿での青春ドラマで、いつの間にかリア充になっていく友崎を応援したい気持ちにもなっていく。ただひたすら普通になっていく普通のキャラたち。


 残す課題は「彼女を作る」である。小説を書いてるちっさい女子と映画みて花火みて三度目のデートで告白する流れに。だがしない!


 彼は気付いてしまうのだ。本当にやりたいことだろうかと悩みだす友崎と、ゲームを投げ出すならもう会わないと言い出す完璧ヒロイン。揺れる友崎と揺れない俺。


 友崎はもしや完璧ヒロインに告白するのか。本当にやりたいこととは一体何なのか。揺れる友崎と揺れない俺。


 やっとの思いで完璧ヒロインを呼び出し、スキル上げのおかげで人生もゲームみたいにカラフルになったと告白する友崎。


 本当にやりたいこととは『人生をカラフルにしたい』ことだと今さら訴える友崎。スキル上げが目的になってしまっているヒロインにガツンと言ってやる主人公。ゲームでは絶対に負けないので反論出来ないヒロイン。


 本気の楽しさ、人生を楽しむこと。そのために今まで通りにスキル上げを続けたいと告げる友崎の勇気ある言葉に揺れるヒロインと揺れない俺。


 人生の攻略。次の課題はアルバイトだった。ちっさい女子とデートし、陽キャたちとカラオケしたり洋服選んだりするエンディング。


 自分の本当にやりたいこととは何か。改めて考えさせられるアニメだった。


 皆さんも本当にやりたいことを考えたいと本気で考えることを考えたいと考えているなら、考える気分にだけはなれるこんなアニメで人生の寄り道をしてみるのはいかがだろうか。






 



 


 

 

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