2021.02.14 イケア

 初めてイケアに来た。俺はロティサリーチキン、嫁さんはローストビーフを食べてコーヒーを二杯飲んだら満足した。もうイケアが好きになってしまうのか、恐るべし。


 ユニクロ、GU、ニトリ、ワークマン。早くて安くてセンスもよくてクオリティも高い。こんな会社がバンバン出てきたらわざわざ高額で手間な接客を受けて買うなんて時代遅れだ。高品質で低価格。


 いや、もっと高くて良い物を買わなくちゃ、なんて言いたい人間の方がよっぽど価値が分かっていないのが現実。


 ついこの間までは物の価値は値段で分かるようになっていた。良いものは高いに決まっていた。そして売れる商品であれば現物の価値より若干値段が安い設定に違いなかった。


 欲しいと思わせる前に必要であると思わせる商品は当然上質であろう。そしてクオリティが高く、いかしたフォルムをしつつ内容も充分過ぎるスペックを持っている。


 さらに、そいつは一生使えるほどの強度とポテンシャルを兼ね備える。だが企業は圧倒的ブレイクスルーを起こす必要はない。


 イニシアチブを取れるポジションに立てるだけのステップでよいのだ。段階的にステージを切り替えていくことが此れからのグローバルスタンダードになるからだ。


 ズンドコベロンチョって何ですか?


 当然のように品質管理は現代の法規制やコンプライアンスによって保護されている。情報化社会前、クオリティを見定める人間は目利きと呼ばれ重宝された。


 戦国時代には価値の分かる人間は将軍の側近となり芸術性の高い茶器や武具がもてはやされた。武術、芸術、茶道、花道など。


 術と道は現代にも多大な影響を与えるソースであり既に根源、オリジナルへと昇華している。この術や道を極めることは、即ち悟りを開くことに似ている。


 世代を越えた人々に啓蒙され引き継がれるには、やはり目利きの存在は大きい。たった一点の芸術作品を歴史に残すにはその何百倍もの目利きを介さなければならないからだ。


 ではクオリティの分かる人間とは何か。つまり、悟りを開いた人間と言えるのではないか。


 ズンドコベロンチョって何ですか?


 それほどに、物の価値は難しくわかりがたいものだ。人間の価値などは計りしれない。物の価値よりもっと複雑で不可解だから。


 ズンドコベロンチョって何ですか?


 そういうわけでイケアで、ランタンと蝋燭を買ってポプリを瓶に飾って、牛乳を混ぜるウィーンっつう棒でコーヒーを飲み、北欧気分を満喫している夫婦がここにいる。


 無力な我ら。


 タオルハンカチやジップロックはまとめて買うと安いので沢山買ってしまった。まさに日本経済が中小企業を追い詰めていく構造。


 この国の為、自分自身の為でもいい。脱サラして社長になろうなんて人間は減っていく一方だろう。夢が無さすぎる。


 巨大企業に翻弄される商店街のような無力な自分たち。貧困、差別、格差はすべて偶然ではない。裏で糸を引いている連中がいる。


 それが、それこそがズンドコベロンチョ。そんなことを考えてしまうほど、イケアは広くて歩くだけでクタクタになる。ハッピーバレンタインデートでした。


 ズンドコベロンチョはタモリの世にも奇妙な物語から引用してます。念のため。


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