2021.02.08 仮病体質

 スリッパを履きながら階段を昇ると、スルッと脱げてしまう。何とかならないだろうかとお困りの貴方にコツを教えたいと思う。


 爪先つまさきをあげろ。


 モスは注文を受けてから作るから、時間のないランチタイムなどは、前もって電話しておくと便利。電話するときは、こう言え。


 もすもす。


 見て分かると思うが、ご覧のとおりの頭痛持ちだ。日本人の10人に一人は頭痛持ちだそうで、遺伝的な要素が強いらしい。


 娘ちゃんも頭痛持ちになってしまったのは俺のせいかもしれない。帰宅後に少し頭が痛いなと思ったら、すぐ横になりたい。


 その日もストレスとか眼精疲労から、首から後頭部にかけてバットでガンガン殴られるような痛みを感じた。まあ、頭痛は2ヶ月か3ヶ月に一回あるかなって、感じで慣れてるが。


 横になって休むと痛くない。少しだけ寝たりした日には即効で治ったりする。この苦しみは伝わらないので仮病だと疑われてしまうのが難点だ。


「ちょっと頭痛がするから、二階で横になるよ。風邪じゃないと思うけど」と伝えると、嫁さんはすぐに体温計を差し出してきた。


「……36.2分って、熱ないじゃん。また始まったよ。パパって、いつも熱っぽいって言って熱無いよね?」


「だいたい……無いけどね」


「いつもでしょ」


 脳ミソだけ取り替えがきくなら、嫁さんや息子と取り替えてみたい。この痛みを味わったら、君らのような痛みを知らない子は立って居られないはずだ。


「パパの大袈裟がでたよっ」


「また頭痛とか言って二階でテレビ見ようとしてるんでしょ」


「あのね、俺の精神力だから、こんな普通に会話してられるけど、颯ちゃんとか嫁ちゃんが、この俺のボロボロの体になったら、立ってることすら出来ないからね、まじで」


「……うっそだーっ!」


「アハハ。大袈裟だなぁ!」


「もういいっ、寝るから。食欲ないから、夕飯いらないから、みんなは勝手に食べなよ。おやすみっ!」


 嫁さんにバファリンを飲まされて、横になる。二時間ほど寝てしまい、時計は11時をさしていた。


 朝まで寝たかったが腹がへって寝れないことに気が付く。そして頭痛は冗談のように治っている。いつものことだけど。


 こっそりと一階に行き、バナナや牛乳で腹を満たす。全然足りないので、おかずを探して本格的に飯を盛る。


 あれだけ威勢よく、寝るとか言ってしまった手前、のんびりはしていられない。昆布や納豆を出してお茶漬けにして、かっこむ。

 

 冷蔵庫にミルフィーユを見つけた。はっきりいってミルフィーユとシフォンケーキは嫁さんが勝手に選んでくるが、デザート界ではかなり格下だと思っている。


 どこから食べても同じ味でつまらないし、飽きる味だと思う。シフォンケーキに関してはカステラや甘食を差し置いてケーキを名乗るのは恥ずべき行為だと思ってる。

 

 文句はあるが、せっかくなのでミルフィーユを食べておくことにした。またあったら食べるんだろうなと思いながら。


 見下した割には美味かった。コーヒーを飲んだせいか、すっかり目が醒めてしまったのでハイキューの続きを見てみた。


 子供たちがはまって、ファミリーマートのコラボしたクリアファイルを欲しがるのもよく分かった。泣けるじゃないか。


 さっきまでコソコソと暗い部屋で食い物をむさぼっていたが、よく考えたらここまで食ったら、もうバレバレなんだろうな、と思った。


 結局、アニメを見ながら歌舞伎揚といちごポッキーまでだしていた。気が付くとあらゆる菓子を食っていた。翌日、嫁さんは冷たかった。


「やっぱり、また仮病だったんでしょ?」


「違う。頭痛持ちだけど、少し休むと絶好調になって、腹が減る病気みたいなんだ」


「……ないわぁ、そんな病気」


 あるんだなぁ、これが。

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