2021.01.16 映画 ホワイト・ラブ
ベルボトムだかパンタロンみたいなのをみんなが履いている。さらにハイヒールを履くことによって、山口百恵のスタイルが抜群によく見える。
今では見ることはほとんどないが最強の組み合わせだ。三浦友和とのラブシーンがあったので、下着姿も出てくる。
けして足が長いわけではないが、めちゃくちゃスタイルがよく見える。俺が若いときは山口百恵が可愛いとは感じなかったが、今見ると可愛い。当時の人たちにはのりピーや広瀬すず以上の強烈な印象だったのだ。
三浦友和のシャツはお腹まではだけている。周りを歩いてる人たちも同じような格好だ。かっこよすぎるファッションに分かりやすい音楽。
テーブルには食べかけのフランスパンが置かれていたり、スペインの朝飯がホットケーキだったりと、間違ったオシャレが所々に散りばめられていて素敵だ。
そのくせ冷蔵庫を開けると冷奴と枝豆が用意されていて、涙をさそう単音チョーキングが鳴り響く。
話し言葉や物語も相当ぶっ飛んでいる。10作目の記念作品らしい「ホワイトラブ」という昭和54年の映画である。
始まりから笑える。グァアテマラ、ニカラグゥアとスペイン語の発音を練習する百恵の口元アップのシーンから既に面白い。
スペイン語の臨時講師の友和と、スタイリストの助手の仕事をしている百恵の恋愛物語であり、挨拶のアディオスとかだけで腹筋が割れそうになる。お前、何言ってんの? みたいなシーンの連続である。
物語も奥が深いようで実に浅い。死んだと思われていた百恵の父親はスペインで病に苦しんでいた。二十年前に疾走しているので百恵に記憶があるとは思えないのだが、再会してすぐに泣く。
具合は大分わるいのか。見た目は顔色も良さそうでぽっちゃりしている。そして「ご覧の通りの脳溢血の後遺症だ」のひとこと。いや、見ても分かんないだろ、それ。
たいした謎でもないのだが親友の妹と、駆け落ちして、何故かスペインに来たらしい。その不倫相手は十五年前にマジョルカ島で死んだという。だったら戻れよ、と思うが。
なんでだよ。その言葉は友和が代弁してくれた。しかし、百恵が「あなたは黙って」とぴしゃり。再度、友和が「なんでだよ」に爆笑。
とにかくオシャレな国を選んだ感。しかし枕元に飾られた日本人形とのギャップがたまらなく、悶えずにはいられない。スペインなのに。
スペインロケという思い切りも良い。雪山を走る列車の模型。驚くべき事に後半に出てくる友和の元彼女はスペイン風の日本人ダンサーだった。
アルテルナールという職業は実在するのだろうか。前座のフラメンコ踊りを済ませたら、客席にはべるホステスのことである。
何故、彼女はそんなみじめな職業を夢みて、スパルタ式のフラメンコのレッスンを受けていたのかは永遠の謎だ。マゾなのかな。
牛追い祭りに巻き込まれて逃げ惑う山口百恵を庇う友和の手に汗を握るアクション。バルコニーから「危ない! 危ない!」とさけぶ友和の元彼女。
板が割れて二階から落下。お前の方が危ないんかいっ。そして両目を見開き、頭部から大量に出血をして死亡。トラウマになりそうな唐突すぎる死だった。生きていたら都合が悪い感じはしていたが、酷すぎてむしろ笑える。
まったく血のつながらない元彼女の子供はふたりが育てると言って日本へ連れ帰ることに。
ポール・マッカートニーみたいな髪型の子供の拙いスペイン語で画面が静止したままハッピーエンド。なんのこっちゃと思いながら、大真面目に作った映画だと思うと、かなり笑えた。
思い出しただけで笑いが止まらない。皆さまもぜひ、ご覧になることをお勧めする。時間をもて余した優雅な一時を味わえるだろう。
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