2021.01.22 夕飯
今晩は娘ちゃんの作ったカレーライス。自分はカレーの気分ではないそうで、昨日の鍋の残りでうどんを作って食べている。
昨日は娘ちゃんの作った寄せ鍋。嫁さんが残業なので、先に食べていたら全部食べてしまった。汁しか残っていなかったので嫁さんは惣菜を買って帰宅する。
一昨日は娘ちゃんの作った豚バラ大根。毎日四百円位で夕飯を作ってくれてありがとう。こんなに利口で美人で仕事の出来る娘がいて、俺は何と幸せなのか。アニメや漫画の話も合うし(駄目な親の言いそうな台詞)。
ところで毎晩、嫁さんは何をしているのか。バリバリ働いているのだ。そう、このコロナ禍だろうとお構い無しに、連日残業をしているのだ。何故なら決算月の契約社員だから。
大学を卒業して、四~五年たったころ、塾の講師をやっていた先輩に同じ職場、塾講師時代の嫁さんを紹介してもらった。
その塾の経営状態が悪くなると、旅行代理店に就職した。出産を期に退職して簿記の資格をとり、派遣社員として働く。
現在は昇格して某有名食品会社の契約社員になり、経理の仕事をしている。だから家事はやらなくていい。彼女はこう言う。
「家事をやれって言われないために、ただそのためだけに頑張ってきましたっ!」
専業主婦だと、俺の金で食わせてもらってるくせに飯もろくに作れないのか。食材を腐らせてゴミを溜めて、部屋は埃だらけじゃないか。などとミミズやオケラみたいな扱いを受けると思っているらしい。
言うわけないんだが、そんなこと。だがそういうところは常識的な嫁さん。何より家事を分担して外食しまくるのが好きな嫁さん。
以前テレビで旦那さんに言われたい言葉は? という質問で「愛してるよ」とか「ありがとう」と応える女性を鼻で笑っていた。
「何を言ってるのかねぇ。お寿司か、焼き肉行こうに決まってるよね」
「……俺に恨みでもあるのか?」
「いやいや、本当はね、ずっと家にいるとおかしくなると思ったからなの。やっぱりお金は大事だし」
最近かっぱ寿司でバイトを始めたばかりの娘ちゃんも激しく同意する。この頃は親があまりに誉めるせいか、仕事が楽しいと思いこんでいるのだ。
「働くのって、充実感あるよね。友達とかと無駄に過ごしてるより、家でぼーっとしてるより、全然楽しいもんっ!」
俺の稼ぎが少ないからだ……とは決して言わない。だが、給料明細を見せない理由は、俺を気遣ってのこと。すなわち、嫁さんは俺より稼いでいる(推定)。
嫁さんは稼さんと呼ぼう。漢字が似てるだけだけど。娘ちゃんは嘆く父親の姿をみて、優しく声をかけた。
「ねえ、パパは仕事好き?」
「嫌いってほどでもないけど、仕事が好きだったら、逆に今の会社に長くは居られなかったかも。つまり労働に意欲があるひとは、誰もあの会社を選らばない」
「……ぶっ!」
嫁さんは真面目に仕事をこなしている。出産で退職したり、大病を患ったときも挫けずに仕事に向き合ってきた。
だから、そんな嫁さんを否定することは出来ないし、家事をやるのは俺だって出来る。こうして、料理をする高校一年の娘も立派に育っているのだから、結果は悪くない。
「たまには家事もやってほしいけど」
娘ちゃんは俺にこっそりと耳打ちした。
「あのね、パパ。あのチンジャオロースとか八宝菜とか野菜炒めが食べたい? どこの世界にピーマンたっぷりの生煮え中華が好きな子供がいると思う。それも連日」
「……えっ?」
「私が夕飯作ってる理由、知らなかった?」
「そ、そうだったのか。うすうす感じてはいたけど、そこまでハッキリと思わなかったよ。そうか、そうか、そうなのか。それは、それは、それは……そうなのか」
なんかそういうのも含めて、家族なんだなって思う俺だった。まとまらずっ……。
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