2020.12.23 ももあげガンダム

 動く実物大ガンダムが出来たらしい。子供たちを連れて家族で見に行ったのは動かないガンダムだった。もう、ずいぶん昔に感じる。


 ガンダムほどのオタクコンテンツを見に行きたいとは思えないのが悲しい。ビッグサイトに行ったときに、実物大のユニコーンガンダムが見えたが、特にワクワクもせず。


 よくよく考えたらゼータまでしか、ちゃんと見ていないからか。色んなガンダムがあった。Gガンダムにクロスボーン、ウィングとかデスティニーとかユニコーンとか、ありまくる。


 スルーして生きた。俺が本当に見たいのは、実際に人が乗れて、操縦出来る旧式ザクである。もしくはエイリアン2のローダーだっけ、あのロボット。


 見た目や流行はどうでもいい。あの辺の未発達で無骨なデザインで、現実的な作業をしてほしい。オリジンは気になって少しは見たが、やはり実物大を造るならザク、またはグフ。


 プラモデルでも人気があったのはジオン軍の尖ったデザインだ。何度もガンダムを造るくらいならパーフェクトジオングを造って脚がいるか徹底的に議論するべきだろ。


 材木集めとか、潮干狩りとかに大型ロボットが活躍する時代はくるのだろうか。そんなことを考えていたら隣でコーヒーを飲みながら嫁さんが言った。


「昨日、会社辞める人がいて、みんなで写真撮ってたんだけどさ。やばいわ」


「……何が?」


「顔が丸くて、幅が出てきたわ。ジムとかエステとか通いたいと思った」


「ぷっ、ジムはないわ、ジムだけは」


 そっちのジムを想像していた。ズゴックに腹を貫かれた量産型の役立たず。あれとボールに乗るくらいなら棺桶に乗ったほうがましだ。


「写真みたら、顔がパンパンなんだもん。コロナで太っちゃったから」


「……ズゴックもない。ゾックなんかもってのほかだ。ああ、こっちのはなし」


 会社辞める人の話はどうでもいいのね。自分の写真映りの心配をしていたのか。その手の相談には着地点がない。


 運動したいとか、筋トレしたいんだけどどう思う? という相談は、まったく無意味である。颯ちゃんが、今日は部屋でみっちり勉強しようと思うんだけど、どう思う? と同じ。


 この際、ハッキリしておこう。俺は会社でよく自分がされる手法を使ってみようと考えた。もう相談なんかしなければ良かったと言わせれば俺の勝ちである。


「まずさ……考えたり、運動したいと思う時間が無駄なんだよね。そう思ったら考えないで行動しなくちゃ。何の意味もないからね」


「!? 突き放すわね」


「だって会話してても負荷が掛かってないから全然、運動にならないでしょ。ももあげしながら、聞くならいいけどさ。その相談するエネルギーを行動にまわさないと」


「……一番、相談しちゃいけない人に相談しちゃった感じ」


 出鼻殺し。この技は原点であるスタートの発想を否定する。それを相談してるのに、そもそもやってもいない事を否定する技である。


「まず、やってみて。それからでいいから、相談するのは。やってみないうちから問題点なんか産まれてこないからさ」


「……」


 嫁さんはももあげをしていた。うそうそ、ごめんね。と、ネタばらしをしながら思った。負荷が掛かったほうが、人は行動するのかも。


 実物大のガンダムがテレビで脚をあげている画像が流れていた。嫁さんの脚のほうが少しだけ高かった。



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