2020.12.9 ドラえもん
小学生のころ、初めて一人で買ったコミックスがドラえもんの六巻だった。言わずと知れた名作「さようならドラえもん」が収録されている巻である。
兄が購入した藤子不二雄作品は、エスパー魔美、怪物くん、パーマン、どれも面白かった。当時は娯楽も少なかったせいか、爆笑していた思い出がある。
例えば、スケジュールマシン(うろ覚え)。時間や宿題をやることにルーズなのび太を、小箱みたいなロボットが追い回し、どつきまくる道具である。
のび太はスケジュールを書いた用紙を、マシンの口に入れようとする。「あれ、入らないよ。大きさが合わないよ?」という。
「貸してみろ、バカだな。こうだよ、縦にすれば入るじゃないか!」
ドラえもんの辛辣な突っ込みに爆笑。のび太のバカさが本物だという点がえぐい。
代わりにスケジュール用紙を入れたドラえもんが、この先マシンにどつき回されるのを見て腹が痛くなるほど笑った。
秀逸な設定は今でも使える内容だ。今じゃ、あんなに笑えないけど、感動回と呼ばれる数話は、今でも目頭が熱くなる。
そんなことも知ってか、娘はスタンドバイミードラえもん2を見に行こうと俺を誘ってきた。正直、リバイバル作品には煮え湯を飲まされることが多い。わざわざ劇場で見る価値あるかね?
「実写版の怪物くんは酷かったからなぁ。チェホンマンの台詞だけは良かったけど」
「フンガッ!」
「フンガー、フンガー」
娘は他に誘う人もいるだろうに、俺を誘った。案の定、食卓でこう言った。
「あのさ、JKと二人でデート出来る父親がどれほど希少か分かってないわ。断るとかあり得ないんだけど」
「ママが行こうか?」
「いや、ママは涙腺が無いから一緒に行ってもつまんない。パパとは号泣できる」
泣きに行くのね。泣く映画かホラー映画は娘と一緒によく見た。アニーやビリギャルは見ながらワンワン泣いていた。俺も泣いた。
つまり、友だちと一緒に行っても堂々と泣けないわけだ。俺たちは涙腺が緩いフレンズなので、安心して見れるらしい。一応、俺は息子にも声をかけた。
「颯ちゃんも行く?」
「俺は鬼滅を見に行く。その前に肛門の呼吸、第一の型、屁!」
「やめろ! ベンチューバー」
最近はトイレでもユーチューブばかり見ているので、こう呼ばれている。そんな感じで日曜日、二人で泣きに行ってきましたー。
開始からすぐ、お婆ちゃんが登場。ゆっくりと歩いて、幼いのび太に話しかけた。
「ごめんね、のびちゃん。あちこち探したんだけど花火は夏しか売ってないんだって」
「ぐすっ……ぐすっ」
俺はとなりの娘が既にゾーンに入っていることに驚いた。おそらく、この映画で一番早く泣いた観客は……うちの娘だ。
もう泣いてるのか。お婆ちゃんのバカ、役立たずとわめくのび太を見るだけのシーンで、何故にそこまで泣けるのか。
優しいからに決まってる。劇場にいる誰より、うちの娘は優しく綺麗な心を持っているからだ。そうに違いないと思った。
いい感じに泣きつかれた俺たちは、バスに乗って帰った。楓ちゃんは俺の肩に寄りかかって少しだけ寝た。
「いや、泣いたね。楓ちゃん」
「うん。忘れん棒とか、伏線も回収してたしすごく面白かったね」
バスに揺られて夕日を眺めながら、俺たちは映画の感想を言い合った。泣き所や、笑いのポイント、藤子不二雄という天才の作り上げた世界観。
はじめて二人で映画に行ったのはアンパンマンだったね。アナ雪もジュマンジの続編も二人で見て、楽しかったね。
一生そばにいるから、一生そばにいて。だから、また面白い映画を一緒に観に行けたらいいなと思った。
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