伍場 二
「話を戻すぞ、行徳は法皇の懐刀だった。資金は法皇から流れていたんだと考えるのが一番自然なんじゃないか? と言う事は法皇が持っているんじゃないのか?」
吉右衛門が視線を庭に向けると義経が日課の一つにされた太刀一万回素振り中だ。隣でさっきまでここにいた弁慶も付き合っている。
「どうするか? この話、これ以上深入りすかどうか。靜華はどう思う?」
「ウチか? ウチはそうやな。なんかのついでに出たらで良いと思うんやけどなぁ。深堀しても何も実入りが無いんやろ。」
「そうか。霞は?」
「姉様と同じで良いよ。私は後に同じ思いする子が居なくなっただけで満足だもの」
「わかった。この件は次のきっかけ待ち保留だ。それで、次の議題なんだが……」
「ちょっと待って。実はね。姉様、吉右衛門。聞いて欲しい事があるの……」
「なんや?」
静華は何か思いつめたように俯く霞を見て背中に掌を載せ耳を近づけている。
「あの時、読んだとき、実は、
………」
霞のか細い声を何とか聴きとった二人は驚きの表情を隠すことなく見せていた。
「霞、その話は俺たちだけの秘密だ。いいな?」
吉右衛門が霞の両肩に手を置いて瞳を覗き込んでいる。
「わかった……」
霞の肩に手を置いたまま、吉右衛門は庭で素振りをしている二人を見ていた。
吉右衛門が靜華に向き直り
「次の話なんだけどな。霞に精退治させたいんだがどうだろう?」
「え? こん子に? なんでや?」
「靜華さん。我々が寝てる間に霞が外で働いて金子がチャリンチャリンたまりますよ。悪い話じゃぁないと思うんですけどねぇ」
「えぇ~悪い顔になってる。姉様助けて」
霞が腕にしがみついている。
「ほうやなぁ。ちょこっと膝頭が見えるくらいの着丈の小袖にしてなぁ……ウチ桃色な。霞は朱色や。後は二、三人適当にかどわかして来なはれ」
「靜華もやるの? ちょっとお姉さんじゃない?」
「大丈夫や、お姉さんが一人入っている続きもんもあるしな……」
「何の話してるんだよ?」
「ん?……知らんわな」
「霞に仕事を与えたいんだよ。その方が気兼ねなくここに居れるだろう? な、霞」
霞が嬉しそうに頷いた。
「もちろん、俺も一緒だ。危ない事はさせない。いいだろ? 靜華」
「そうやな。霞が良ければ。やったらええわ」
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