伍場 一

  遅めの朝餉を取り終え、九郎以外の4名がそのまま残って霞の話を聞いていた。


「昨日、馬場の心を読んだことで分かった事を教えるわね」


「ああ、頼む。」


「巫女の技が通用しない理由は巫女の残滓。これを少量使った香を浴びると技が通用しなくなるみたい。でも、どこまでの技が通用しないのかはまだまだわからないって」


「またか。あいつどれほどやねん」


「それと頼嗣が吉右衛門に仕事を依頼した理由は姉様をおびき出す為、最初から九郎の事など関係が無かったってこと。姉様の力を奪い取って巫女の結晶を作ろうとしたみたい。それと、弁慶、あんた頼嗣に姉様の事話したでしょう? それで、確信して動き出したみたいよ」


「なんと! なんとした事か。靜華様にこんなご迷惑をおかけするとは! 言い訳は致しません。拙僧をこの場で殺してください」


「もう、ええよ」


静華が手を振っている。


「それと、そう。あの寺は頼嗣が巫女の結晶を作る目的でつくった。それで、原料となる降天の巫女の力が欲しかった。だから、姉様を呼び寄せるために吉右衛門を使った。ところが、吉右衛門は姉様に仕事の事を教えずに弁慶と二人で始めた。ここで、頼嗣の計画がずれたのよ。ツボのある寺に姉様を呼び寄せて巫女の力を取るのが本当の目的だったのに。でも、吉右衛門は姉様とそこに行く事は無かった。なんでかしら?」


霞がじっと吉右衛門の瞳を見て答えらしきものにたどり着いた。しかし、真実を言ってもしょうがない事もあると少女ながらに気付いているのだろう。きつく睨んで吉右衛門に話を継がせる。


「え? 俺? いや、ずれたといったら靜華が今仕事してないのを知らなかった。だろ。していれば靜華と行くさ。それだけ。だよ」


「ふ~ん……まあいいわ」


霞は知りえることを踏み込まずに視線を移して話を戻す。


「行徳とかいう奴の研究成果は降天の巫女の力の無力化と現世の巫女を誕生させる秘薬。そして、巫女の結晶。まぁ巫女の結晶がどんなもんかもわからないけどね。それを作る技術は私が自爆したあの寺ごと全て喪失した。道具も技術を知る者も。それは、今後、同じものが出来無いって事」


「それなぁ。残滓があるってことはな、精製したもんがあるって意味やろ? 問題はその精製出来たものから結晶が作り出せたかどうかってことや。もし、あるんならだれが持っているって事になるな」


「静華。お前、詳しいな」


吉右衛門が驚いて尊敬のまなざしで静華を見つめる。


「好きやねん。そう言うの。結晶もな坩堝の温度を徐々に下げて作るもんとな種結晶をな、上からぶら下げて引き揚げたりな、いろいろあんねん」


「お前、本当かよ」


「ウチこういう話なら二時間はいけるで」


静華が前乗りになってきたところで、吉右衛門にちょっとあとで聞くからと制止されている。

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