陸場 四
丹後との国境にあった小さな村。その村には十五軒ほどの集落があり,村人はそこで細々と林業に携わって生きていた。
まだ、夜が明けぬ早朝。
その村に太陽が昇った。
そして、そのまま太陽は次第に高度を落としその村に消えていった。
直後、
灼熱の爆風が襲いかかり一瞬で村にあった粗末な建物は全て昇華した。
村の全て。
建物とそこに暮らす人々。生あるものは考える間を与えられずにそのまま気体となって消滅した。
その動きを、離れた村を見渡せる小高い丘の上で見守る一団がいた。
一団は、騎馬武者が五名と男が四名、そして、地面に倒れ伏す少女が一人。
「やはり、感がいいだけの娘では耐えられんな」
行徳が倒れている娘を見ながらため息をついて、
「やはり、降天の巫女並みの力が無いと駄目なようだな」
娘の様子を見ていた。
「今、行徳様のおっしゃる通りに巫女の残滓を使い巫女を作ろうとしています。もう少し、時間はかかるかと思いますが、いずれは必ず成功してご覧にいれます」
傍にいた男が行徳に今後の計画について説明していた。
「若、この通りでございますが近日中に必ずや……」
「おお!期待しているぞ、行徳。この力が手に入れば、すべては我が手の中になる。法王もお喜びになられるであろう」
行徳の傍らで二人のやり取りを見ていた男が満足そうに答えている。
「佐伯、結晶の回収をしておけ」
倒れている娘に視線を移す佐伯、娘は身体中から血を出して苦悶の表情を浮かべたまま、こと切れていた。
「佐伯様、奴らが動き出しました」
馬を駆り報告に来た騎馬武者が行徳の護衛と思わしき男の棟梁、佐伯に報告する。
「いかがいたしましょうか行徳様」
「佐伯達は街道にて待ち伏せいたせ。儂は近くで見物だ。若は危険なので都へお戻りください」
行徳は騎馬武者に指示を出し自らも山中に分け入って
「今日でお終いだ、吉右衛門。ひひひひひ」
呟きながら、いやらしく笑い消えていった。
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