水の王の蒼1

渋谷かな

第1話 水1

「暇ですね。」

「暇だな。どこかに面白いことはないかな?」

 ある所に暇をしている天使エルエルと悪魔デビデビがいました。

「面白い人間ならいますよ。」

「どこどこ?」

 人間界を覗き込む。

「三角関係の学生さんか。」

「はい。誰か一人は不幸になるタイプです。」

「いいね。俺たちがウインウインの関係だ。」

「はい。これで今月の私たちの営業成績もノルマ達成です。」

 天使と悪魔は談合して? 協力して良いことをする人間と悪いことをする人間を作りだしていた。

「ウッシッシー!」

「ケッケッケー!」

 天使と悪魔が人間のサガを笑っている。



「おはよう。」

 水月蒼は16才の高校一年生。運動神経は良いが勉強がダメ。

「おはよう!」

 白月姫も16才の高校一年生。蒼のお隣さんで幼馴染。天真爛漫な乙女。

「おはよう。」

 魔月朧も16才の高校一年生。姫のお隣さんで幼馴染。優秀な生徒会長タイプの眼鏡。運動神経はダメ。

 三人は一緒に登校するぐらい仲が良かった。

「おい、朧。昨日の宿題を見せくれ。」

「嫌だ。」

「そうだよ! 蒼! 宿題は自分でやりなさい!」

「クッ!?」

「だって朧のノートは私が借ります!」

「姫ならいいよ。」

「いいのかよ!?」

「いいんだ。可愛いから。」

 特に朧は姫のことが好きだったので、姫には優しかった。


「姫、好きだ! 僕と付き合ってくれ!」

 ある日、朧は姫に告白した。

「ごめんなさい。私、蒼が好きなの。」

 しかし姫は蒼が好きだった。

「ガーン!」

 朧はフラれるのであった。

(おい。諦めるのかよ?)

 その時、落ち込んで弱っている朧に悪魔が囁く。

「誰だ!?」

(諦めたら、そこで終わりだぜ。)

「何者だ!?」

(俺は悪魔デビデビ。おまえの味方さ。)

 朧の前に悪魔が姿を現す。

「悪魔!? どうして悪魔が僕の味方をする!?」

(悪魔は不幸な奴の味方だ。女にフラれたおまえのことを心配しているんだ。好きなら奪っちゃえよ。おまえを魔王にしてやろう。)

 さらに悪魔は囁く。

「いいんだ。僕には姫が蒼のことが好きだったことは知っていたし、気持ちの整理をつけるために告白したんだから。これで姫が幸せになれるなら。」

 朧は最初からフラれるつもりだった。

(愛する者のために自分を犠牲にするか。泣かせるね。・・・・・・でも、あの女は幸せにならないぞ。)

「なぜだ!?」

(それは俺が今から車を暴走させて、幸せそうに歩くあの女と男を引き殺すからだ!)

「なんだって!? 姫と蒼を!?」

 悪魔は姫を殺すというのだ。

(悪魔は手ぶらでは帰れない。おまえの魂か、殺してあの女の魂を持って帰らないと俺が邪神様に怒られるからな。)

 悪魔も大変なお仕事である。

(さあ? どうする? 女を奪うか? それとも女を殺すか?)

 究極の悪魔の選択肢である。

「・・・・・・分かった。僕は魔王になる!」

「契約成立だ。ケッケッケ!」

 朧は姫を守る為に悪魔に魂を売った。

 つづく。

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水の王の蒼1 渋谷かな @yahoogle

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