Ⅲ
二号棟の教室Bに入ると、確かにほとんどの同級生が思い思いのグループを作って、談笑に
霞は――夏希と、当時も会話を交わしていたのであろう、屈強な身体をした男性……そして、大きな輪っかのピアスをした金髪の女性……と、一緒に話の輪を作っていた。
「霞ちゃんさあ……俺、霞ちゃんのこと、あの時、好きだったんだぜ……それなのに、告白するスキもないんだから」
「そうそう、霞はガードが堅かったよね。告白とかされてたの?」
夏希の質問に、霞はどこか気落ちしているような表情をした。
「うん……何人かは。だけれど、みんな、どういう顔だったか思い出せないわ」
「霞のこと、男子のほとんどが好きだったよ。だから上級生に嫉妬されちゃって、大変だったわね……女の復讐って怖いもんだから、よく生き延びたよ。ハハハ」
哲道は、この輪っかのピアスをした女性の名前を思い出せなかった。
哲道が、教室のドアのところで突っ立っていると、後ろから老齢の男性の声がした。
「お、もしかして中沢か?……なんだ、なんだ、大人びたなあ。まあ、三十を越えれば、自然と大人びるもんだとは思うが、苦労とか、疲労とか、たまっているんじゃないか?」
その声の主は、やはり
「お久しぶりです。先生には――」
哲道の言葉が終わらない内に、同級生が郭先生の存在に気づき、それぞれ、温かい声援を、彼に投げかけた。哲道は、また、ひとりぽつねんとするしかなかった。
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