Ⅱ
ふたりは並んで、K高校へ向かっていた。
「卒業した後……クラスメイトの子と連絡を取ったりしてた?」
書店を出て、五分くらい経ってから、そう、霞が
「いや。県外の大学に行ってしまったし、連絡先を交換するほど親しい仲になった同級生なんて、いなかったし」
哲道もまた、やたら緊張した声色が出てしまっていた。
「じゃあ、今日が久しぶりの再会になるんだ」
「そう。僕なんかと話したい同級生なんて、いないと思うけど……ただ、
それが、建前にすぎないのは、もちろんだった。本音は、街灯のあかりのたもとで、触れられない横顔を見せているのだから。
K高校の校門には「三年四組 同窓会 会場 二号棟教室B」と書かれた用紙が貼られた看板が、立てかけられていた。
「霞じゃん!」
そんな、はずんだ声が、前の方から聞こえてきた。
「……夏希? 久しぶりね。元気にしてた? ちょっと……あかぬけたわね」
「そうかな? 霞だって……昔より、美人になったんじゃない? リンとしてて。お仕事はなにしてるの?」
「いまは仕事をしていないわ。大学院生になったの……なんだか、学び足りないような気がして」
「その前は?」
「外務省で働いてた……けど、私にはあまり合わなかったみたいで」
「ふうん……」
夏希は明るく振る舞っているが、霞に対する冷たい驚きのようなものが、そこには感じられた。
霞は高校生の時、飛びきり勉強ができたわけではなかったから、それが、ある種の親近感を周りに与えており、男女問わずの人気はそこからもきていた。
十数年経つうちに、外見よりなにかが劇的に変化してしまったように、夏希には思えたのだろう。
「行こう。みんな待ってる」
「まだ、集合時間より早いけど……みんないるの?」
「うん、大体はね。みんなこの日を楽しみにしてたから、早く来ちゃって」
夏希は、哲道から霞を奪い去って、校舎の方へと向かっていった。哲道は、蚊帳の外になった。
哲道は、霞が自分からどんどん離れていくのを見ながら、ぽつねんと立ち尽くしていた。
霞は、哲道にとって憧れの存在だった。しかし、哲道は、なにかパッとしない存在だったし、なおかつ、高校生活の後半は、大学進学のために血眼で勉強する必要があったから、ふくれあがる恋心を、どうしても、抑圧しようとしなければならなかった。
冷たい風が吹いて、哲道の身体を包みこむと、二手に分かれて、どんどんあちらの方へと抜けていった。
玄関の光とは対照的に、校門から見える教室の多くが暗く覆われているのを見ると、哲道のこころに、同窓会に来たことを後悔する気持ちが、わずかながら
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