星探し編
01
ぼんやりと目を覚ませば、何の匂いもしなければ、音もしない。
膝に広がったまま置かれた本は、眠る前に読んでいたものだ。
時計は、夜の11時。
「……」
着信のない携帯から、電話番号を呼び出す。
返事は、ない。
双子の部屋に入れば、整然としている。
脱いだ服もなければ、いつも掛けられている制服も鞄もない。朝出かけたままの状態だ。
次にキッチンへ向かえば、冷蔵庫に詰められたいくつかの食材。
今日、帰りに町に買い出しに行くと言っていたはずだ。重い荷物があるから、嫌がるアレクが引きずられていったのを覚えている。
少なくとも、この様子では、家には帰ってきていないようだ。
「……」
考えたくはないが、想像がつくそれ。
予兆が無かったとは言わない。近頃、アレクが昔の夢を見たと言っていた。
夢にも、意味があるもの、ないものがある。明確に見分けるには、それなりの訓練がいるが、勘の鋭いアレクのことだ。無意識の内に何かを感じていたのかもしれない。
携帯を開き、改めて番号を呼び出す。
『はい』
「ゾイス? ふたりが帰ってこないの」
電話の向こうで少し動揺した息遣いが聞こえる。
『まさか探しに行ってないだろうね?』
「今気が付いたの。連絡もつかないし」
『そうか。よかった。相手の狙いもわからない。君は、学院から出ないように。明日の昼には連絡を入れる。いいね?』
本当は、自分で探しに行くべきだ。
『い い ね ?』
それを見透かしたように、念を押す言葉に頷く。
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