09
懐かしい夢の終わりに目を覚ませば、片割れの驚く声が鼓膜を震わせる。
「おはようございます。アレク。今日は随分早起きですね」
まだクリソも着替えていない朝。アレクが、この時間に起きるのは珍しかった。
「んー……なんか、昔の夢見たぁ」
「昔?」
「コーラル死にかけた時の」
「……すみません。どちらの時です?」
「片方、俺、気絶してて記憶ねーから」
「そうでした。では、あの時のですね」
着替えながら、あの時のことを思い出す。
コーラルとコテージに戻った後、密猟者について確認されたが、双子は共にコーラルから離れず、ずっとコテージを見張っていたため、密猟者に何もしていなかった。
しかし、コーラルが占う限りでは、悪い結果は出なかった。
不思議に思いながらも、深追いはせず、本来の仕事である精霊の方を対応しに向かい、森の中でその理由を知ることとなった。
「人魚の霊薬の話なんてしたからですかね?」
「なら、アイツのせーじゃん」
不機嫌になるアレクに、着替えと薄水色の宝石のついたピアスを渡す。
***
「終わったぁ! よかったぁ!」
無事、レポートも終わり、ローズが喜ぶ中、不貞腐れるように頬杖をついているアレク。
会って早々、お前のせいで夢見が悪かったと殴りかかろうとするのをダイアに止められ、コーラルに止められ、不機嫌だった。
「私、提出してきます!!」
罪悪感に押され、レポート提出を買って出れば、ダイアも一緒についてくる。
「はぁ……やっぱり、人魚の霊薬は無理だったかぁ」
「まだ諦めてなかったのか……」
「諦めないよ!?」
今回のレポートの題目しては諦めたが、人魚の霊薬を手に入れること自体を諦めたわけではない。
「有名なのは、人魚の鱗と卵が必要なレシピなんですけど、他にも、血だったり、涙だったりが必要なレシピもあって」
「卵って、あいつら雄だぞ」
「人魚は性転換するらしいですから、ワンチャンいける」
「今度殴られかけても助けてやらねェからな」
「う゛……」
容易く想像される光景に、ローズも口を噤む。
好奇心は大事と言われるが、同時に猫も殺すと言われる。節度は持とう。
「でも、一番難しいのは涙なんだよなぁ」
「あいつら泣かなそうだしな」
「でも、意外にいけるような気がするんだよね」
人魚が大切な人を思って流した涙は宝石になるといわれており、貴重で高価な代物として、取引されている。
それこそ、魔術師であっても、一生に一度見ることができれば、運が良い人生と言われるほどの代物だ。
「……ほどほどにしとけよ」
「は、はい……」
ダイアの忠告に、静かに頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます