第33話「両親仲睦まじく」
「ねえ、喜彦さん」
久しぶりに帰った自分の寝室、ベッドの上で隣り合わせに座っている、愛する夫に声をかける。
夫は「ん?」と不思議そうにワタシの顔を覗き込んできた。
不意にゼロ距離になった私と夫の距離に胸の鼓動の高鳴りは抑えられそうになかった。
「ちょ、ちょっと近い、です……」
「あ、ああ、悪い……」
夫はちょっとばかり申し訳無さそうに距離をおいた。自分から言っておいて、離れた距離に寂しさを覚えて、自分からその距離を埋めた。
そして、
「……勝くん、素敵な人ですね」
と言った。
「だろう?俺の自慢の息子だ。鈴も気に入ってくれたようで嬉しいよ」
私の言葉に、最初はちょっと驚いたような顔をしていたが、すぐにニッコリと満面の笑みを浮かべて、まるで自分が褒められたかのように、嬉しそうに『自慢の息子』について語り始めた。
私はそれを静かに聞く。こうなった夫は止められない。
「……あの」
「なんだ?」
普段私が夫の話を遮って話を始めることがないからか、物珍しいものを見るような視線を向けられる。
「やっぱり、私、貴方のことが、好き、です……」
私は言うと、夫の首に手を回す。
夫はそれが『合図』だと察し、私に応じる。
ああ、愛されているな、と。
私は体に刻まれている
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