第31話「長女の気持ち」ぱーと2

「結局、私、ただいただけだったなぁ……『まだ未熟だけど』か。あなたは十分『兄』としてやれていると思うわよ……」


私は自室で一人、ぼうっと先日起こった事件を思い返して……クイッ、と水で割ったお酒を煽った。未成年の飲酒は禁じられているが……まあ、1年位誤差の範疇だろう。お母さんだって「たまにくらいならいいわよ」って言っていたし。


今日は雲ひとつなくて、きれいな星空が見えるとニュースで言っていたので、ベランダに出ようと思ったけれど、奏音と勝くんがいたから、自然と遠慮をしてしまった。

あの二人は夏休みの間ほとんどずっと一緒だった上に、兄妹以上の仲に進みそうな気がしてちょっと怖いけれど、まあこれと言って文句はない……わけでもないが、もし二人が決めたら賛成はしようと思う。まあ、きっとそんなことにはならないだろうが。


その上今日の『カレー事件』(私が勝手にそう呼んでるだけ)では明らかに小説のネタとか、助けてくれた感謝以上に、『好意』が見え隠れしていたような気がする。というか絶対奏音は勝くんのことが好きだ。悔しい。奏音から好意を向けられることのないこの『姉』という立場であることをこれほど悔やんだ日はないかもしれない。


それにしても、と思う。

彼――勝くんからは、なんとも言えない不思議な力を持っている気がする。うまく言葉にすることはできないが、きっと響佳あたりに言ったら共感してくれるだろうと、そのうち響佳に話してみようと思った。まあただ、絶対本人には伝える気はないが。

次は、どんなことが起こるのだろう、奏音の件のように家族の誰かが傷つくようなことは起こってほしいとは微塵も思わないが、今までになかったような楽しい毎日になってほしいと、願わずにはいられなかった。

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