第13話「奏音には才能あるし、頑張ってるから報われてほしいんだよね」
「なあ奏音、なんかSNSやってたりするか?Twitterとか」
翌日、僕は奏音の部屋で奏音の小説の手伝いを終えてからそう切り出した。
「え? やってないですけど・・・・・・どうしたんですか?」
「いや、小説の知名度、要するになんだっけ、PV?を増やすためにSNSを使って拡散しようと思ったんだけど」
そう、昨日の夜僕の足りない頭で考えた結果出てきたたった一つの策がこれだった。
「でもSNSって怖いイメージしかないです・・・・・・」
「いやいや、そんなことないぞ? 現に僕やっててなんも怖いことないし」
そう言って僕はスマホの画面を見せる。
画面に表示させているのは、僕のTwitterのアカウントのページ。
フォロワーは500人くらい。まあまあいる程度だ。
「みんな優しくしてくれるし。怖くないよ」
「そ、そうなんですか・・・・・・?」
「うん。あでも位置情報が分かっちゃうような写真とかつぶやきとかはしないでね? 住所ばれるかもしれないから」
「わ、わかりましたけど・・・・・・アカウント作ればいいんですか?」
「いや、それに関しては作らなくていい。昨日のうちに作ってフォロワーは100人いるから」
僕はスマホを操作してまた奏音に見せる。
こんど表示されていたのは、『夜桜』という名前のアカウントだ。昨日急いで作って、自分のアカウントで「僕の妹です! 良ければフォローしてください!」と紹介ツイートをして放置していたが、まさか100人行くとは思っていなかった。『妹』というワードが響いたのかもしれない。
「奏音にはこのアカウントを使って小説を投稿したときとか、自分の小説を読んでほしいときとかにURLを貼ってツイートすればいい。普通に日常的に使ってもらってもいいよ」
そう言いつつ僕は『夜桜』のアカウントのIDとパスワードを奏音にメッセージアプリを使って送る。
「は、はい・・・・・・準備いいですね・・・・・・?」
「まあ、奏音には才能あるし、頑張ってるから報われてほしいんだよね」
僕は苦笑いして言う。なんか恥ずかしいことを言っている気がする。
「あ、ありがとうございます・・・・・・!」
「いいよいいよ。じゃあさっそく紹介していこうか。昨日添削したやつ訂正した?」
「はい。今日から登校していく予定でした」
「だったらちょうどいい。投稿する時間とかは?」
「それは・・・・・・決めてなかったです」
「よし、じゃあ19時くらいに投稿しよう。それまではフォロワーを増やしていこうか」
「フォロワーを増やすって・・・・・・何をすれば・・・・・・?」
首をかしげて奏音が言う。
確かに。僕も適当にやってたらいつの間にか増えてた感じだな・・・・・・『フォローバック100』とかでもないし・・・・・・どうしようかな。
「うーん、Twitterに慣れることからすればいいんじゃないかな? まずは絡み・・・・・・ネッ友を増やすことからかな」
「ネッ友・・・・・・」
「ああ、リプライとか送って仲良くなっていけばいい。せっかく小説を書いてるんだし、奏音と同じように『本気で小説家を目指してる人』とか」
「それいいですね! ワタシも自分以外の小説家を目指してる人がどんな人なのか話とかしてみたかったですし!」
奏音はうっきうきで自分の投稿している小説のサイトらしき名前で検索をかけ始める。
「おー! こんなにたくさん! そうだなぁ・・・・・・あ、この人の作品とか読んだことあるしリプライ飛ばしてみよう・・・・・・!」
奏音がTwitterに夢中になり始めたので僕は自室から持ってきていた夏休みの課題を開く。
集中して淡々と課題をこなしていく。
問題は思いの外簡単なもので、ものの数分で一つ終わらせてしまった。
ほかの課題に取り掛かろうとしたとき、奏音が「ひうっ!?」と小さく悲鳴を上げた。
「どうした、奏音?」
「えとその、なんていうか、えっと・・・・・・」
奏音が言いづらそうにもじもじとして、顔を伏せながら手に持ったスマホを指さす。あまり許されるようなことではないが・・・・・・僕は奏音のスマホの中を覗き見る。
そこに表示されていたのは、なんというか、その、えっちな画像だった。
おそらく、タイムラインかさっき見つけていたアカウントの誰かのホーム画面だろう。
「あーすまん、設定するの忘れてた・・・・・・ほんとごめん。今設定するから。貸して?」
奏音は僕にスマホを手渡す。
手渡されたスマホで奏音のアカウントのページを開いて設定をし直してから、返した。
「よし、これでいいはず・・・・・・ごめんな? またなんかあったら言ってくれ」
「ありがとうござます・・・・・・わかりました」
これはちょっとまずったかもなあ・・・・・・ちょっとTwitterに恐怖を抱かせてしまったかもしれない。
今後は気を付けていこうと思った。
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