第11話 人間というものは

神 =

なあ、お前。人間というものは、どこまで残虐な心根になってしまったのか。 わしの預かり知らぬところで、このような非道を起こすとは。 救い難いものじゃのお。

閻魔=

で、では。あなた様のご指示ではないので。てっきり、お灸を据えられたものか、と考えておりましたが。

神 =

指示どころか、伺いすら受けてはおらぬわ! このままでは、終わらぬぞ。またぞろ、彼の国の報復が始まるであろう。それにしても、民間航空機のハイジャックをしてとは、愚かなことをするものじゃ。民間人を巻き込むなど、卑怯千万! としか言えぬであろうに。世界中からの非難が集まるとは、考えぬのかのお。

閻魔=

愚かなことと申されましても、それはあの者たちには通用せぬことでございましょうな。富の搾取を訴えている者たちでございますからな。あの者たちの国々の地下に眠る資源を取り上げている、と、そう考えているのでございましょう。哀れなことで。

神 =

ほお、お前は哀れむのかね、あのような残虐非道な行為をとる者を。

閻魔=

これでは、立場が逆ではございせぬか。わたくしが糾弾して、断罪を! とご進言するべきものですぞ。に対して、あなた様がご慈悲のおこころでもって、わたしを諫められるべきところなのに。

神 =

ほっほっほ。そうじゃった、そうじゃった。日の本という国に、良き格言があったのお。[ならぬ堪忍、するが堪忍]。しかし、堪忍できまいのお。彼の国では。

閻魔=

はい。自国民を大量虐殺された彼の国が、報復に出ぬことなど有り得ぬことでございます。それをせねば、国民が許しますまい。

神 =

なるほど。あの国の国民性を考えれば、無理かのお。しかしのう。彼の国で、多くの国民が信仰するキリスト教の教えに、「右の頬を打たれたら、左の頬を 差し出しなさい」とあったとおもうのだけれども。

閻魔=

これは、意外なお言葉を。そのような弱腰の教えなど、彼の国では死語になっておるではありませぬか。

神 =

ううむ。連関の世界にならねば、良いのだが。

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