第10話 少年のこと

 ここで少し、少年のことをお話ししておきましょうか。

 小・中学時代の少年は、両親の過大な期待に応えるべく、必至に勉学に励みました。塾通いは勿論のこと、たまの休日には叔父に当たる現役大学生の応援授業がありました。携帯電話を持たされてはいますが、もっぱら母親とのライン専用です。

ゲームなどはもっての外で、遊びのあの字も知らぬが如くにでございます。それが故に、成績もほとんどトップでベスト5から落ちた経験がありませんでした。


 が、高校ではそうはいきませんでした。中位の成績となり、中々上位に食い込めないのです。落ち込む彼に対し、両親・塾の講師共々、慰めの言葉をかけます。

曰く、

「体調不良のせいさ」

曰く、

「たまたまのことさ」と。

そして必ず付け加えられた言葉、

「次回、頑張れ!」。


 新学期を迎え、父親が単身赴任をしました。そして母親と二人だけの、食卓です。

「うざいんだよ、もう!」。突如、少年がキレたのです。


「大王様!閻魔大王様!」

 突然、部下が呼ぶ声がします。慌てふためいたその声に、私は後ろを振り向きました。真っ青な顔色の青鬼が、私に叫びます。

「た、大変でございます。彼の国において、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開しております。ひ、飛行機が、ビルに激突しております」


「大王様! こちらでも、でございます」

 顔を真っ赤にした赤鬼も、叫びます。部下の元に急ぎ駆け付けた私は、遠メガネに飛びつきました。私が管轄する地獄が、現世に出現したが如くでございました。思わず、神の言われた『お灸』という言葉が、頭に浮かびました。


“神も、罪なことをされるものだ――”

“あれ程に慈悲の心を説かれる神が、このような仕打ちをされるとは――”

 正直な私の気持ちでございます。暗澹たる心持ちになってしまいます。ところがです。その後、神にお会いした折には、意外な言葉をお聞きしました。

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