第5話 無精ひげ
肩を落として語られる閻魔大王さまの姿は、意外なものです。てっきり、当然のことと叱り飛ばされるものと思っておりましたから。
神 =
そうよの、あの時は驚いた。わしに問い掛けることもなくじゃった。傲慢そのものじゃ。まあその後、彼の国にもお灸を据えはしたが。
閻魔=
お灸と申されましても、今では唯一の超大国として、君臨しておるではございませんか。その傍若無人たるや……。実に嘆かわしいことで。
神さまにはご自慢のおひげのようにも見えますが-どうやらあの水戸黄門を意識されているご様子で、時折その髭を下に流すように触られます。しかしどうひいき目に見ても、単なる無精ひげとしか思えません。あの閻魔大王さまにもそう映っているらしく、下を向いて苦笑いをされていますよ。
神 =
まあ、そう責めてくれるな。
あまり人間世界に干渉することも、良くないことじゃでの。といって、放っとき過ぎたかもしれんがの。これから先、人間どもが今少しの反省をするならばと、人間世界で言う異常気象を起こさせておるのじゃが。気付く者もおれば、目をそらす輩もおるし、のお。困ったものじゃて。
で、どうかね? 先ほどの、少年のことは。
閻魔=
申し訳ございません、話が逸れてしまいました。
少年の住む日本という国は、先の敗戦後に価値観が一変したのでございます。道徳観も、百八十度の大転換でございます。お分かりいただけますでしょうか?
慌てて顔を上げられましたが、わたしにはなにかしら、とってつけたような物言いに聞こえました。が、神さまは「うんうん」と、満足げに頷かれています。失礼ながら、他の皆さんにその毎日をかしこづかれているせいでしょうか、それとも下々の者たちゆえだからとお思いのせいでしょうか、少々とげが感じられる言葉にも気付かれないようでして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます