第6話

「留学?」

「うん。イギリスにね」

「なんで?」

「フラワーアレンジメントの資格を取るため」


そういえば、梨絵は花が好きだった。

庭でもよく育てていた。


「でも、日本でも取れるだろ?」

「うん。でも、日本人は同調圧力が強いじゃない?」

「確かに」


日本人は、他人と同じくふるまっておけば、安心という心理がある。

長いものには巻かれろ的な生き物だ。


「私、それが嫌なんだ。パパもママもそうでしょ?」

「確かに、世間体を気にしているな」

「私が、中学を全寮制にしたのは、その両親から離れたかったんだ」


耳がいたい。

僕も、世間体を気にする傾向にある。


情けない限りだ・・・


「で、お願いなんだけど、お兄ちゃん」

「どうした?」

「私と一緒に行かない?」


固まってしまった。


「何で僕と?」

「私、お兄ちゃんとは、あまり思い出がないから、たくさん作りたいの・・・それに・・・」

「それに?」

「お兄ちゃんも、広い世界を見た方がいい」


梨絵は、お見通しのようだ。

出来すぎた妹だ。


「でも、今日はたくさん話そう。ゆげの向こうに大切な人の笑顔。日本人でよかったね」

「ああ。この点はな」


こうして、クリスマスイブの夜が去る。


梨絵は、「待ってるからね」と、旅立って行った。


翌年の3月。


僕は、飛行機の中にいる。

両親を説得するには・・・たやすかった・・・


速攻で、OK した。

少し、あっけない。


愛する妹の待つ国へ・・・

僕は向かう。


空港に降り立つと、妹が出迎えてくれた。


「お兄ちゃん。がんばろうね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

素敵な聖夜の過ごし方 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る