第178話:消えた村人④

 あれから皆で色々と調べまわったが、気を引くような手がかりは見つからなかった。

 そうしている内に日が暮れてきたので一旦全員で集合した。それからお互いに情報交換をしたが、やはり村人は一人も見当たらず形跡すらなかったとのことだった。


 これ以上は探しても無駄だと判断し、今日はこの村で一晩過ごすことになった。この村で一晩過ごし、何も無ければ冒険者ギルドへ帰還する。そういう方針に決まった。


 そうこうしている内に日が暮れて夜になった。俺達は村の中心あたりで焚火しながら囲っている。

 カッツェ含む数人はここには居ない。俺達以外は見張りをしているからだ。日が昇るまでは全員で交代しながら見張りをすることになっている。

 もう少ししたら見張りの人も交代のために戻ってくるだろう。それまで焚火の周りでゆっくりすることにする。


「しかしこの村で何があったのかしら……」


 ラピスが不安そうな様子で話してきた。


「ゼストは何があったのか思いつかない?」

「さぁな。さっぱりだ。手がかりが少なすぎる」

「ゼストでも分からないなんて……本当に何が起きたのかしら……」


 こんな感じでラピスはずっと考えているようだった。


「現段階では手がかりがほぼ無いからな。さすがに今すぐには答えは出ないだろう。悩んでも仕方ないんじゃないか?」

「そうかもしれないけど……でも気になって落ち着かないわ……」


 気持ちは分からなくは無い。俺だって気になっているしな。

 今回ばかりは本当に何があったのか思い当たる節は無い。こんなのゲーム内のイベントでも経験したことないしな。


 仮にモンスターの仕業だった場合、モンスターが居た痕跡が全く見当たらない謎が残る。

 仮に盗賊の仕業だった場合、金目の物を全てスルーしている謎が残る。


 どちらにしても無視できない大きな謎が残ってしまう。

 一番気になるのは村も家も荒らされていないという点だ。村人全員が失踪し、証拠も一切残さない。まさに完全犯罪といえるぐらいの見事な手口だ。


 村人の身に何が起きてどこへ消えてしまったんだろう?

 やはり手がかりが無い状態で答えに辿り着くのは無謀か……


「あ! 分かった! アタシ思いついたぞ!」

「へ?」


 リリィが自信満々な態度で手を挙げた。


「分かったって……この村で何が起きたのか判明したのか?」

「ほ、本当に分かったの?」

「リリィさん分かったんですか!?」

「うん!」


 リリィの予想外の言葉に驚く。

 まさか本当に真実に辿り着いたのか……?

 いやまさか……


 そんな不安な感じで3人の視線がリリィに集中する。


「それなら聞こうじゃないか。何があったと思うんだ?」

「みんな狩りに出かけたんだよ!」

「…………は?」

「とっても強いモンスターが現れて、そいつを倒すために全員で倒しに行ったんだと思う!!」

「「「…………」」」


 ああ……うん……リリィらしい発想だな……


「い、一応聞いてみるが、どうしてそう思ったんだ?」

「アタシの村でもそうだったもん! 強いやつが現れたら全員で協力して戦おうとしたぞ!」

「そ、そうなのか……」


 なんというか、リリィの一族らしいやりかただと思ってしまった。


「けどさすがにそれは無いと思うぞ。そもそもモンスターが出たような痕跡は無かったじゃないか……」

「それに村人全員が戦えるとは限らないじゃない……」

「何日も帰ってきてないのは不自然だと思いますけど……」

「う~ん……ダメかなぁ? いいと思ったんだけどなぁ……」


 こういうやり方はリリィみたいな竜人族だからこそできる方法だろう。

 竜人族なら優秀で戦闘に強い。だから戦った経験が無い女の子でもそれなり戦力になるはず。竜人族だからこそできるやり方だろう。

 さすがにこの村が全員が竜人族なわけがないし、まずありえない。


「そもそも村人だけじゃない。俺達より先に来た冒険者も未だに見つかっていないんだ」

「あ、そういえばそうだったわね」

「前の依頼が失敗と判断されたから再び同じ依頼が出されたんですよね?」

「ああそうだ。その原因もできれば知りたい」


 この村に訪れた人が全員が失踪しているんだ。道中には何も無かった以上、この村に原因があるとしか思えない。


「恐らく今夜だ。今夜に『何か』が起きる。村人や訪問者を全員行方不明にしてしまうような『何か』が起こるはずだ」

「……!」


 俺が言い終わると3人に緊張感が漂った。


 先にやってきた冒険者も同じことを考えたに違いない。

 村に訪れたが村人を全く見かけない異変に気付く。しかしそれ以外は何も変わったところが無く手がかりが全く掴めなかった。そこで一晩過ごして何も無ければ帰ろうとしたはずだ。だが結果的にそれは叶わず失踪してしまった……といった感じだろうか。

 ならば同じようにこの村で待っていれば原因が判明するはずだ。人々を消し去ってしまうような『何か』が再び起きるはず。それをこの目で確かめてやる。


「とはいえただこうして待っているのもあれだな……あ、そうだ。久々にお前らのスキル見てやろうか。もしかしたらこの後に戦うことになるかもしれんしな」

「そうね。そろそろ新しいスキルが欲しいと思ってたところなのよ。お願いするわ」

「私もお願いします」

「強いスキルが欲しいぞ!」

「分かってるって。んじゃ順番に見ていくから待っててくれ」


 そしてまずはラピスの元へと向かった。

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