第174話:出発
俺達は街の外まで移動し、何人かの冒険者と一緒に待機している。すぐ近くには馬車も3台用意されていて、あの馬車に乗って目的地へ向かうのだろう。
この場には俺達含めて11人の冒険者が居る。全員が冒険者ギルドの依頼のために集まっている。
それ以外は冒険者のギルド職員であるフローラが1人居るだけだ。
フローラが全員を見回した後、やや大きい声で話す。
「これで全員揃ったようですね。では簡潔に伝えます」
フローラは一呼吸置いてから続ける。
「これから皆さんにはチェスタという村に向かっていただきます。村の現状を調査するだけですので、村で危険だと思ったらすぐに帰還しても構いません。どういった状況に置かれているのかを調べるための依頼ですからね。馬車は既に用意してありますのでそちらをお使いください。以上です。ではお気を付けていってらっしゃいませ」
言い終わるとフローラは少し下がった。
後は馬車に乗って村に向かうだけだ。そう思って動こうとした時だった。
「ちょっといいか。お前らに話したいことがある」
そう言って俺達の前に出てきたのは1人のおっさんだった。
「オレの名はカッツェだ。一応Bランクの冒険者をやっている。この場に居る人は初対面の人が多くバラバラでまとまりが無いだろう。そこで依頼が終わるまではオレがまとめ役……まぁいわゆるリーダーを務めたいと思うんだがどうだろうか?」
なるほどな。確かにここまで人数が多いと統率が取りにくいだろう。誰か1人が指揮役が居た方がスムーズに進むはずだ。
「これでも一応はそれなりの人数のリーダーをやっていたことがある。どうだ?」
「まぁ……あんたならいいと思うぜ」
「ああ。カッツェさんなら信用できるしな」
そんな声がチラホラと聞こえてきた。
カッツェは反応を待って少し黙っていたが、異論を唱える者は誰もいなかった。
「では反対無しということでいいかな。ということで依頼が終わるまではオレがリーダーを務めさせてもらう。短い間だがよろしく頼む」
特に揉めることなくスムーズに決まったな。
こういうのは誰もやりたがらないだろうし。引き受けてくれるだけ有難い。他のみんなもそう思っているはずだ。
「話は以上だ。こういったことは最初に決めておきたかっただけなんでな。では出発しようか」
そして馬車へと移動していく。
俺達も続いて馬車へ向かおうとするが……
「おいおい。本当にお前らも来る気なのかよ……」
1人の男がラピスを睨みながらそんなことを言ってきた。
「な、何よ。どういう意味?」
「まだ女のガキじゃねーか。戦えるのか? いくら人数不足だからって、こんな帳尻合わせみたいな奴まで連れていくこと無いんじゃねーの?」
「ちょ、ちょっと! 見た目で判断するの? あたしだって冒険者なのよ。役立たずだと言いたいの?」
「お、お姉ちゃん……落ち着いて……」
「足手まといなら要らないってことだよ。何もせず逃げ回るぐらいなら――」
「止めんか!!!!」
カッツェの大声で2人はすぐに黙る。
「くだらんことで言い争うな! 同じ依頼を引き受けた仲間じゃないか! いきなり仲間割れしてどうする!?」
「し、しかしだな……」
「どう役に立つのかその目で判断すればよかろう! 文句があるのなら終わってから言え!」
「あ、ああ……悪かったよ……」
「さっさと出発するぞ!」
カッツェが馬車に乗り込むと、それに続いて男も気まずい表情をしたまま乗り込んだ。
「もう……失礼しちゃうわ……」
「あのくらい気にすんな。実際に活躍して鼻を明かしてやればいいさ。いちいち相手してたらキリがない」
「そうね。次も絡んできたら無視するわ。時間の無駄だもの……」
しかしまだ気にしているのか、ラピスは落ち込んでいるようにも見えた。
それから馬車に乗り込もうとした時、ショーンとロイがラピスに近づいてきた。
「元気だせって。オレ達は君らが強いってこと分かってるし。十分頼りになると思ってるからさ」
「そうだね。見た目で馬鹿にされたのはボクも経験あるし。ああいうのは相手する必要ないと思うよ」
「そうするわ……ありがと。もう大丈夫よ。とりあえずあたし達も馬車に乗らないと」
ラピスは振り向いて手を指し伸ばす。
「フィーネもいきましょ!」
「う、うん」
元気が出たのかラピスは笑顔になり、フィーネと共に馬車に乗り込んだ。
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