第167話:新たな住人

 テレシアが見えるようになったので、一旦セレスティアに戻ることになった。目的は達成したし、あれ以上は狩る理由も無かったしな。

 そんなわけでセレスティアに到着し、一旦屋敷に帰ることになった。


「ゼスト様。今日は本当にありがとうございました。この御恩は一生忘れません」

「俺としても新しい発見があったわけだし。そもそも検証に利用させてもらったようなもんだ。そこまで気にしなくてもいいよ」


 盲目の人でも視覚共有が有効というのは知らなかったわけだしな。

 もしかしたら他にも俺でも知らないスキルの使い道があるかもしれない。その可能性が存在するということを知れただけでも収穫はあった。


「わたくしにできることがあれば何でも仰ってください。ゼスト様がお望みであれば何でも致します。この御恩は到底返しきれるものではありません。一生掛かってもゼスト様に尽くします」

「い、いや。そこまでしなくてもいいんだけど……」

「ですが、このままではわたくしの気が済みません。どんなご命令でも従います。何かしてほしいことはありませんか? 何でもいいんです」

「う、う~ん……」


 俺としては大したことしてないつもりなんだけど、テレシアにとっては命を救ったに等しいぐらいの恩を感じているらしいな。

 しかしどうするかな。ここで断ったりしたら、テレシアにとって逆に負担になるかもしれん。

 かといって別にして欲しいことは特に無いしな。


 う~ん………………あ、そうだ。


「だったらさ。いっそのこと俺の屋敷にくるか?」

「……よろしいのですか?」

「広くて部屋も余ってるし。1人増えるぐらい大丈夫だよ。今はテレシアにしてもらいたいことは思いつかないし。しばらくは落ち着いてゆっくり考えたらいいんじゃないかな。せっかく見えるようになったわけだしね」

「…………」

「まぁテレシアも他にやりたい事があるだろうし無理にとは――」

「行きます!! ゼスト様と一緒に住まわせてください!!」

「えっ」


 すっげぇ食いついてきたな。

 大人しい子だと思っていたから急に大声で叫んできてビックリした。


「それはいいわね! テレシアが来るなら大歓迎よ!」

「見えたばかりで不慣れでしょうし。私達がサポートしますよ」

「アタシは賑やかな方が好きだぞ!」

「皆様……!」


 3人も受け入れてくれてるし。仲良くできそうだ。


「んじゃ決まりだな。ならすぐに帰ろう。リーズが待ってるしな」

「はい! ふつつか者ですが末永くよろしくお願いいたします……!」

「あ、うん。よろしくね」


 やけに大げさな言い方をしたもんだから少し戸惑ったが、気を取り直して屋敷に向かうことにした。




 屋敷に戻ると、リーズが出迎えてくれた。


「! みんなお帰りなさい! どうだった?」

「成功だ。バッチリ見えるようになったぞ」

「ほ、本当に!?」


 リーズがテレシアの方を向くと、テレシアもリーズに近寄った。


「はい。ゼスト様のお陰でこの通り見えるようになりました。この御恩を返すために今日からこちらに住まわせていただく事になりました」

「そうなの?」

「ああ。どうせ部屋も余ってるし。テレシアも空いてる部屋を………………………………あっ!!!!」

「!? ど、どうしたの!?」


 やっべぇ……勘違いしてた……


「ごめん……よく考えたら部屋余ってなかった……」

「そ、そういえばそうかも……」


 寝室として使える部屋は5つ。つまり現状では1人余ってしまうことになる。

 広い屋敷だしずっと部屋は余ってるもんだと勘違いしてた。というか今までそんなこと気にする必要が無かったもんな。


「どうしよう……まさか溢れるなんて思ってなかったからな……」

「わたくしは部屋が無くても平気ですわ。床でも寝られますし。雨露をしのげるだけの屋根がある場所ならどこでも構いませんわ」

「いやいや……そういうわけにはいかん」


 というか年頃の女の子をそんな状況にさせたくない。


「じゃ、じゃあ私がゼスト君と一緒に部屋になる!」

「それだとリーズ用の部屋が無くなる。できれば全員分の部屋を確保したいんだよな」

「だ、ダメなの……?」

「ダメというか、俺も1人になりたい時があるしな……」


 こういうのはキッチリしといた方がいい。リーズも1人になりたい時があるだろうしな。


「ならあたしとフィーネが一緒の部屋になろっか?」

「いいのか?」

「構わないわ。というか何度か一緒に寝たことあるし」

「え。そうなの?」

「最初はここのお家が広くて落ち着かなかったんです。なのでお姉ちゃんの部屋で寝ることが多かったんですよ」

「そ、そうなんだ……」


 そういや孤児院時代にずっと一緒だったって言ってたっけ。

 たしかに屋敷を買ったばかりの時は3人だったしな。心細くなって一緒じゃないと寝られなかったんだろうな。


「ならそれで頼む。悪いな」

「いいのよ。住まわせてもらってる身だしね。気にしないで」


 というわけで、ラピスとフィーネは相部屋になってもらうことになった。


 というか人増えたなぁ。まさか部屋で悩む日が来るとは思わなかった。こんなにも人数が増えるとは思ってなかったもんな。

 いっそのこと引っ越しを検討するべきなんだろうか。


 ……いや。

 これ以上は増えることはないだろうし。大丈夫だろう。たぶん。


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近況ノートにてテレシアのイラスト公開しています。

https://kakuyomu.jp/users/kunugi_0/news/16818093078990792600

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