第163話:モンスターの強さ
俺達はセレスティアから離れ、南方面へと向かっている。
リーズを除く5人で狩場へと移動している最中だ。さすがにまだリーズを人目に付くような場所へ行くのは怖い。なので屋敷で待機してもらっている。
テレシアは盲目である故に真っすぐ歩くことも苦労するだろう。なので今はラピスと手を繋いだまま歩いている。
「そういえば、その肩に乗っているのはテレシアが召喚したモンスターなんだっけ?」
ラピスがテレシアの肩に乗っているドラモを見ながら話しかける。
「はい。まだ紹介してませんでしたね。この子はホーちゃんと名付けています。ホーちゃんのお陰で今のわたくしがいますわ。この子はわたくしの希望なのです」
「へー。そうなのね。頼もしいわね」
なるほどね。
テレシアにとっての
「ん~……でもどこかで見たことある気がするのよね……」
「私も……」
ラピスとフィーネは一度目にしているからな。わずかに記憶に残っているのだろう。
「……あ! 思い出した! やっぱり見たことあるよお姉ちゃん!」
「やっぱり? でもどこで見たのか思い出せないのよね……」
「ほら。初めてオークを狩りに行くときだよ。その時にすれ違ったんだよ」
「あー…………そういえばそんなことあった気がするわ」
俺も思い出すのに時間かかったしな。
もっと特徴が無い見た目をしていたら思い出すことすらできなかったかもしれない。
「まぁ。わたくしと一度お見かけしたことがあるんですね」
「見かけたというか偶然すれ違っただけよ。その時にその鳥……ホーちゃんだっけ? を見て召喚スキルのことを知ったわ。それからゼストが召喚スキルを見せてもらったのよね」
「なんか懐かしく思えちゃうね。私も一度召喚スキル取ろうかと思ったし」
「そうなんですか? ゼスト様も使われるのですね!」
「ん? まぁな」
なぜか嬉しそうにするテレシア。
そんなに喜ぶような要素があったとは思えないんだけどな。
「そうなのよ! ゼストが召喚するモンスターはすごいのよ! 色々と種類もあるし全部強いんだから!」
「それはすごいですわ。沢山召喚できる上に強力だなんて、ゼスト様はとてもお強いのですね!」
「強いっつーか便利なんだよな。俺が召喚できるモンスターは5体とも性能違ってて使ってて楽しいってのもあるけど」
「え? まだ他に召喚できるモンスターが居るんですか?」
「まぁな」
そういやまだ全部見せてなかったっけ。
「ふ~ん。知らなかったわ。どんなのがいるの?」
「俺が召喚できるのは……『マンタ』、『コラーゲン』、『ダイナ』、『レックス』、『ハク』だな」
「へぇ~。よくわからないけど他のも強そうね」
「特に気に入ってるのはハクだな。もし全モンスターの中で順位付けするなら、ハクをトップ5位以内に入れるだろうな」
「そ、そんなに強いの!?」
「ゼストさんそんなモンスターまで使えるんですね……!」
「まぁ! とても優秀なモンスターを扱えるんですね」
ハクは見た目と性能どちらも気に入ってる。
大半のプレイヤーが羨むほどの性能をしていて、俺もハクを取得するのに苦労したもんだ。
「今言った順位付けは俺の主観によるものだ。俺の中での評価だからあんまり参考にならないと思うぞ」
「あ、あの! 一つ聞いていいですか?」
「ん? どうしたフィーネ」
「前に見た大きなドラゴンは、ゼストさんの中ではどのくらいの順位なんですか?」
「あーあれか。レッドドラゴンのことだろ?」
「そうです!」
懐かしいな。闘技場に出てきた爺さんが召喚してきたんだよな。
あの時はさすがにビックリした。
「ん~………………そうだなぁ…………」
「ドラゴン? 何のこと?」
「あ、そっか。お姉ちゃんはその時居なかったもんね。えとね……」
フィーネがラピスに闘技場の件について話した。
あの時はラピスは捕らわれていて見ていなかったもんな。
「へぇ。そんなことがあったのね……」
「だからね。その時のドラゴンがどれくらいの強さなのか知りたくて聞いてみたの」
「確かにそれは気になるわね。あたしも聞きたいわ」
ラピスとフィーネが興味津々な目で見つめてくる。
「俺が順位を付けるなら…………30位ぐらいかな?」
「えっ。そんなに低いんですか!? もっと上かと思いました……」
「さっきも言ったけど、あくまで俺個人による評価だからな。実際の強さと違っても苦情は受け付けないぞ」
こういった評価基準は人によって違うからな。
ある人では1位と評価する人もいれば、違う人では100位という場合も全然ありえる。
「で、でも何で30位なんですか? てっきり10位以内に入ると思ってたんですけど……」
「レッドドラゴンは確かに強い。攻撃面では上位に入るだろう。けど攻撃性能に特化しすぎてるんだよ。だからコラーゲンみたいなモンスターに苦戦したりする。ついでに言うなら、サイズも大きくて巨体なせいで小回りが利かない。意外と扱いが難しいんだよ。そういった点を考慮するならば、どうしても評価を下げざるを得ないんだ」
「へ、へぇ……」
「難しいんですね……」
召喚スキルは奥が深い。
一番の欠点として、召喚者自身がやられたら召喚したモンスターも消える仕様だからな。どんなに強いモンスターを召喚しても、無視してプレイヤーを狙われたら意味がない。
単に強力なモンスターを召喚できればいいというわけではないのだ。
「じゃ、じゃあさ。テレシアのはどうなの? ホーちゃんってどれぐらい強いの?」
「初心者帯に限れば1位だと思う」
「!?」
「そ、そんなに強いんですか!?」
「あらまぁ……」
ドラモはとても優秀で初心者に扱いやすくてかなり頼りになる。
だからこそ初めて見かけた時に驚いたわけで。
「な、なるほど。だから目が見えなくても冒険者としてやっていけたわけね……」
「そういうことだ。テレシアは実に運がいい。ドラモは最初から強くて――」
「おーい! 見つけたぞ!」
前方を歩いていたリリィが立ち止まって腕を振っていた。
「ゼストが言っていたのはアレのことか?」
「んー………………ああ、アレだ。よく見つけたな」
「へへっ。アタシは目が良いから遠くても見えるんだ」
遠くにある地面を眺めると、数匹の巨大アリの姿が動いているのを発見した。
「さーて。今回のターゲットはあいつらだ。全員準備しろ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます