第157話:帰還
そして俺達は森を抜け、馬車の元へと歩み寄った。
馬車に近づくと、中からリーズが顔を出して叫んだ。
「!! ゼストくーん!」
「! 皆さんお帰りなさい!」
「え!? あ、あれ? どうして森の中から出てきたの!? 違う道に行ったはずよね!?」
リーズが反応すると、中にいたラピスとフィーネも顔を出してきた。
「ま、色々あったんだよ」
「ゼストくん……もう……大丈夫なんだよね? みんなで帰れるんだよね?」
「ああ。帰ろう。皆で一緒にな」
「よかった……」
馬車に乗り込むと、リーズがすぐに抱きついてくる。
「うおっ」
「ゼストくん……無事でよかった……」
「だから言っただろ。俺を信じろって。この程度でやられるわけが無いだろう」
「うん……うん……」
リーズは俺の胸元に顔を埋めて動かなかくなってしまった。このままだと身動きが取れないがまぁいいか。
「2人とも悪かったな。リーズの護衛を押し付けちゃって」
「いいのよ。それぐらいならいつでも引き受けるわよ。こんな可愛い子に手出しなんてさせないわ」
「とはいっても、ゼストさんが離れた後も特に何も起きませんでしたけどね。私は何もしてないですよ」
「そうか。無事で何よりだ」
ここら一帯はモンスターはかなり少ないし。比較的安全な場所なんだろうな。
そんなやり取りをしていると、ランドールが馬車の先頭部分に乗り込んだ。
「さてと、御者はまたオレがなろう。行先はセレスティアでいいんだよな?」
「ああ。そこまで頼む」
「了解した。んじゃ掴まっててくれ。動くぞ」
ランドールは手綱を握り馬を操る。そしてゆっくりと馬車が動き出した。
俺はふとランドールが気になり話しかける。
「なぁ。そういやランドールはこれからどうするんだ?」
「そうだな……」
ランドールとしては目的は達成したわけだし。これからどうすのかが気になった。
「もし行く当てが無いなら俺の所に来るか?」
「……え?」
「結構広い屋敷に住んでてさ。持て余してるんだよ。1人ぐらい増えても問題無いし歓迎するよ」
ランドールが信用できる人物なのは一緒に居て分かる。元盗賊だったとはいえ、動機は不純なものじゃなかったわけだし。悪い人では無いはずだ。
恐らくエンペラーに入る前は冒険者だっただろうし。同じ冒険者同士で一緒になるのも悪くない。
「ありがとう。誘ってくれたのは嬉しいんだが、遠慮しておくよ」
「そっか。まぁ無理にとは言わないさ。もしかして行く当てでもあるのか?」
「行く当てというか、オレはセレスティアに到着したら………………自首するつもりなんだ」
「……え?」
あまりにも意外な言葉が出てきて驚いてしまった。
「自首って……なんで今更……?」
「一時的にとはいえ、盗賊の真似事をしたのは事実だ。何をしようがこの罪が消えるわけじゃない。元からそのつもりだったんだ」
「なるほど……」
ランドールなりに思いつめていたんだな。
元々盗賊になるような性格じゃないだろうし。ずっと悩んでいたんだろうな。
「オレのやっていた事はずっと空回りしていた気がしてな。今まで何をやっていたんだろうって……」
「そんなことはないさ。ランドールが居たから古代兵器の存在を知ったわけだし。やったことは無駄じゃないさ」
「そう言ってくれると気が楽になるよ。でもやることは変わらないさ」
「そっか……」
これ以上は何を言っても野暮ってもんか。ランドールは自首するを止めるつもりは無いだろう。
「それに……」
「それに?」
「もう疲れた……。当分は何も考えたくないし、どこかで落ち着きたいんだ…………」
「…………」
遠い目をするランドールに対し、俺は話しかけることはできなかった。
そのまま馬車に揺られ続け、何事も無くセレスティアに辿り着くことができた。
正直言って、色々と気になる謎は残る。
エンペラーはなぜ古代兵器を作れる技術があったのか。どうやって素材を集めたのか。
リヒベル国とはどこまで繋がりがあったのか。そもそも古代兵器の存在をどこで知ったのか。
しかし今答えを知ったとしても意味がないだろう。知ったところで何かできるわけもないしな。
今はリーズが帰ってきたことを喜ぼう。
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