第155話:脱出
キングは化け物を見るような目でこっちを見てくる。
「俺様の……アスタロトより強い剣なんて存在するはずがねぇ……」
「まだ言うか。自分の目でしっかり見ただろ。それが事実だ」
「ありえねぇ……アスタロトは神器に匹敵する剣なんだぞ……! これより強い武器なんて神器ぐらいしかないはずだぞ……!!」
「はぁ?」
アスタロトが神器と同性能だって?
んなアホな。そんな話聞いたことない。
「神器に匹敵するって……誰から聞いたんだよそんなの……」
確かにアスタロトは十分優秀な部類ではあるが、神器ではない。神器と比べるとさすがに見劣りするに決っている。
そもそも神器と比較すること自体が間違っている。何故なら神器はそれぞれの武器の頂点に立つ存在として用意された物だからな。
だから普通のプレイヤーはいちいち比較したりしない。
「というか現にお前の剣を折っただろうが。それだけで十分性能差がある証拠だろ」
「そ、そんなの偶然だ! どうせ何かのスキルでも使ったんだろ! じゃなきゃアスタロトが折れるはずがねぇ!」
「んなわけあるか。武器破壊のスキルは存在するけど俺は使ってなかったし、そもそもそんなの要らん。つーかスキル使ってたならもっと粉々になってるはずだろ」
転生前にアスタロトは一度手にしたことはあるんだが、金欠で売っちゃったんだよな。
割と良い値で売れたから満足していたが、今思うと少しだけ後悔している。1本は持っておいてもよかったかもな。
「じ……じゃあ本当に……アスタロトを折るだけの性能があるってのか……?」
「何を言っているんだ。
「へ……?」
「今は適正レベル不足でかなりのペナルティがある状態だからな。本来の1割も性能を発揮できてないっての。適正レベルさえ満たしていたら今頃お前なんざアティラリごと消滅してるよ」
「……ッ!?」
適正レベル不足の状態だとアビリティが全て無効化されてしまうからな。
俺のエルダーカノンは神器なだけあってアビリティも凄まじい性能をしている。単に攻撃力だけが高い武器とはワケが違う。
だからこそレベルが足りない今の状態では使いたくなかった。
何故かって? 理由は簡単さ。
こんな超劣化した状態の神器を見たくないからな。だから適正レベルを満たすまではできるだけ使わないようにしている。
「いい加減諦めろ。もう終わりだ」
「………………………嘘だ……ありえない…………間違ってる……」
「ん?」
何やらキングの様子がおかしい。
「こんなの……違う…………負けるはずが…………ない…………」
「往生際が悪いぞ。次でトドメを――」
「こいつさえ……いなければ……うまくいっていたのに……」
近づこうとした時、キングは折れたままのアスタロトを握りしめて立ち上がった。
「せっかくアティラリが完成したんだ……。テメェさえいなければ……こんなことにならなかったんだッ……!」
「運が悪かったな。俺だってここに来る予定なんか無かった。運命だと思って諦めろ」
「俺様の…………邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
もはや小型ナイフ並に短くなった剣を持って突撃してくるキング。
そんな攻撃が当たるわけもなく……
「終わりだ」
「ガハッ……!」
近づかれる前に、俺の剣がキングの腹を貫いた。
「キング。お前は危険な存在だ。生きている限り大量虐殺を諦めないというのなら見過ごす訳にはいかない。ここで止めさせてもらう」
「ガフッ……」
剣を引き抜くと、キングはよろよろとフラつきながら歩いた後に倒れた。
「馬鹿な……俺様が……負けるなんて……間違ってる……」
「古代兵器なんて持ち出して虐殺を企んでるくせにどの口が言うんだ。ま、テロリストに何を言おうが無駄か……」
「くそっ……ここで死ぬわけには………………ちくしょう…………ちくしょう…………………………」
立ち上がろうと動いていたが、しばらくすると動きが止まり……二度と立ち上がることは無かった。
「これでようやく終わりか……」
「……! ま、まさか本当にキングを倒すとは……」
「おー! さすがゼストだ! やっぱり強いな!」
ランドールとリリィが足を止めてこっちに振り向いていた。
「な、なに!?」
「キング様がやられただと……!?」
「キ、キング様ぁぁぁぁぁ!」
足止めされていた他の連中も驚きの表情でキングを見ていた。
「よ、よくもキング様を……!」
「てめぇら許さねぇぞ! 殺してやる!」
「仇をとってやる!」
おっと。どいつもこいつも逆上して襲い掛かろうとしてきやがる。
それにしても意外というか、忠誠心は高いんだな。それ程までにキングのカリスマ性があったんだろうか。まぁどうでもいいか。
まだまだ増援は尽きないだろうし、そろそろ潮時だな。
「リリィ! ランドール! 引くぞ! こっちにこい!」
「おう!」
「え……ここから逃げられるのか……?」
「いいからこっちにこい!」
「あ、ああ……」
俺はアティラリのすぐ側まで近寄り、2人を呼び寄せる。
すると賊達も次々と追ってきて囲んできた。
「お、おい……まだまだ増えるぞ! この状態でどうやって逃げるつもりだ!?」
向こうはぞろぞろと増え続けて逃げ場を失いつつあった。
「いいから。2人とも俺に掴まっていろ」
「し、しかしだな……」
「アタシが全員ぶっ飛ばしてやるよ! どれだけ増えてもぶっ飛ばせばいいだけだ!」
「しなくていいから。リリィも俺に掴まっていろ」
「う、うん……。ゼストがそういうのなら……」
2人は不安そうにしながらも俺の体を掴んできた。
そうこうしていると、増え続けた賊達が俺達を囲んで睨みつけてきた。もはや完全に逃げ場が無い状況だった。
「覚悟しろよ! 3人ともぶっ殺してやる!」
「男は死ぬまで拷問してやる! 女の方も一生犯し続けてやるよ!」
「へへっ……」
どいつもこいつも目をギラつかせながらにじり寄ってくる。
人数差は圧倒的だし、こっちには逃げ場もない。普通ならば絶体絶命な状況なんだろうな。
しかし俺には関係ない。
「賊なんかに
そして次の瞬間――景色が変わった。
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