第154話:性能差
俺達が通ってきた出入り口から男達が続々出てくる。さっき出くわした男が仲間を呼んで引き連れてきたんだろう。
しかし出入り口が狭いせいで、通れる人数が限られている。どれだけ大勢の人を引き連れてこようが、通れないのなら意味が無い。
あれならリリィとランドールの2人だけでも十分対処できるだろう。
増援は2人に任せ、俺はキングへと近づく。
「お? まさかテメェ1人だけで俺様の相手をするつもりか?」
「ああ。ランドールだと荷が重いだろうしな。俺がやることにしたよ」
「おいおい。随分と自信タップリだな。別に全員でかかって来てもいいんだぜ? 他の連中には邪魔しないようにしてやってもいい」
「要らねーよ。賊言う事なんて信用できるかっての」
「ま。テメェがそういうならそれでいいさ。どーせ結果は変わらんしな」
キングは馬鹿にするように笑った後に、俺の事を睨んできた。
「つーかテメェは誰なんだ? ランドールにでも雇われた傭兵か?」
「そんなのじゃない。ただの冒険者だよ。用があるのはお前の近くにあるアティラリだよ。お前には過ぎたオモチャだ。賊なんかが扱っていい代物じゃない」
「へぇ。
何故か俺の事をリヒベル国の関係者だと思ってやがる。
まぁ別に訂正する気も無いからこのままでいいけど。
「んじゃさっそく始めるとするか。俺様も暇じゃないんでね。さっさと終わらせてやるよ」
そういって腰にある剣を手に取り、気だるそうにこっちに向けてきた。
あの剣はやはり……
「賊のくせになかなかいい物持ってるじゃんか。さすがは盗賊団のリーダーってところか」
「お? テメェみたいな雑魚でもこの剣の価値が分かるのか! ハハハ! 見る目あるじゃねーか!」
急に上機嫌になって見せつけるように剣を掲げるキング。
「これは俺様が特に気に入ってる剣でな。性能もいいが、見た目も素晴らしい。
「うん。なかなか悪くない性能をしていると思うぞ。確かアスタロトだろそれ」
「そうさ! これは魔剣〝アスタロト〟! どんな鍛冶師にも作れない最高クラスの武器だ! テメェも分かってるじゃねーか! ハハハハハ!」
本当に上機嫌だな。余程嬉しかったと見える。
というかあれはやはりアスタロトか。刃の部分が黒く、独特な見た目をしているから分かり易かった。
ちなみにアスタロトの性能はこれ。
――――――――――――――――――――
□アスタロト
攻撃力:998
適正レベル:50
・自身のHPが50%以上の場合、ダメージ+300%
・自身のHPが50%未満の場合、与えたダメージの一部を吸収し、HPを回復する
――――――――――――――――――――
HPに余裕がある時はダメージが増え、ピンチになりそうな時は回復するアビリティ構成になっている。まさに攻守が一体になったような性能だ。
シンプルかつ強力で非常に扱いやすくてオススメの武器だ。
「これで分かっただろ? テメェ如きがこれより優れた武器を持っているはずがねぇだろうし。この時点でテメェの負けが確定してるんだよ。ククク……」
「いや? それより優れた武器なら俺は持ってるぞ? 確かにアスタロトは優秀だけど、別に最強ってわけじゃないぞ」
「ああん? ふざけたこと抜かしてんじゃねーぞ雑魚が」
急に不機嫌になりやがった。
コロコロと表情が変わって忙しい奴だ。
「だったら見せてみろよ。これより優れた武器を出してみろよ!」
「……まぁいいか。だったら望み通りに見せてやるよ。剣の中で頂点に存在する神器ってやつを……!!」
インベントリから目的の武器を選び、ゆっくりと取り出した。
そして取り出した剣を握り、キングに向けた。
すると……
「……………………プッ。アーッハハハハハ!!! なんだよそれ!! ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
俺の持っている剣を見るなり笑い出すキング。
頭でもおかしくなったのか?
「ひぃ……ひぃ…………あー笑った。参った参った。こりゃ勝てねぇわ」
「いきなりどうした? そんなに笑えるようなことか?」
「だってよぉ。自身タップリに出してきたのがガラスの剣なんだぜ? これを笑うなってほうが無理だろ! 性能で勝てないからって、見た目で勝負しにくるとか予想できねーって! いかにも貴族とかが好きそうな剣じゃねーか!」
ああなるほど。
俺の持ってる剣は刃の部分が半透明になっているからな。それでガラス製だと勘違いして笑い出したのか。
「見た目だけならアスタロトよりもマシかもな。そこだけは認めてやるよ」
「そりゃどうも」
「だが武器ってのは使ってこそ輝くもんだ。そんな装飾用の剣は武器とは言えねぇよアホ。部屋の隅にでも飾っとけ。まぁ俺様にくれるってんなら貰ってやってもいいぜ?」
「あげるわけねーだろ。これは俺の魂だ」
「だろうな。だったら盗賊らしく奪うまでだ」
そしてキングは構えて俺を睨みつける。
「楽しませてもらった褒美だ。苦しませずに一瞬で終わらせてやるよ」
「んなもん要らん。これくらいならリミポ無しでもいけるだろうし」
「何をゴチャゴチャと分けわかんねーことを! 戦う前から負けた時の言い訳か?」
「そんなんじゃない」
「まぁいい。とっとと始めるとするか……いくぜっ!」
キングは勢いよく動き出し距離を詰めてくる。
「おらぁ!」
「……ッ!」
ガキンッ!
「おっ! これを防ぐか。なかなかやるじゃねーか」
キングの攻撃を剣で防ぐ。
それを見たキングは押し込んでこようとせず、すぐに離れて距離を取った。
「思ったよりも楽しめそうだ。じゃあ次はこれでどうだッ!」
キングは再び距離を詰めて襲い掛かる。
振り上げた剣で切りかかるつもりだろう。
その攻撃を防いだ瞬間――
バキィィィン!
「……へ?」
キングの持っていたアスタロトの刃が折れ、宙を舞った。
折れた刃は放物線を描いて飛んでいき、少し離れた所に落下した。
「…………………………………………は?」
キングはその光景をみて動きが止まった。
落下した折れた刃を見て唖然としている。
「………………? …………? ……? ?……????????????????????」
何が起きたのか把握しきれていないような顔で、自分の持っている短くなったアスタロトを見つめていた。
「……………………な…………何が……起きた? ど、どうして…………俺様の剣が…………折れた…………んだ……?」
「それだけ性能差があったんだろう。最初の一撃目は奇跡的に耐えれていたが、さすがに2回目は耐えきれずに折れたんだろうな」
「せ…………性能差…………だと……? ば…………ばばばばば馬鹿な事を言ってんじゃねーよ…………。アスタロトより……強い剣なんてあるわけが…………」
「だったら自分の目で確かめてみろよ。
「……!! 《
キングはすぐにスキルを発動して俺の持っている剣を見つめた。
するとキングは腰を抜かしたようにその場に尻もちをついた。
「な…………なんだそのふざけた剣は………………」
「さっき言っただろ。これが俺の魂の剣だ」
「こ、こんなことが…………俺様の剣より強いとか……あ、ありえない……ありえない……ありえない……アリエナイ……アリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイ………………」
余程ショックだったのか、虚ろ目で俺と剣を何度も交互に視線を動かすキング。
「テメェは……一体何者なんだ……」
「通りすがりの冒険者だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「何なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! その剣はよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
――――――――――――――――――――
□エルダーカノン
攻撃力:95000
適正レベル:99
・???
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