第151話:☆古代兵器の性能
時は少し遡る。
ここはとある砦にある一室。
この部屋には1人の男が椅子に座っていた。椅子は普通よりも大きく、まるで玉座のような派手な見た目をしている。
そんな椅子に足を組んで座っている男は、窓の外にある遠くの山を眺めていた。
しばらくそうしているとドアが開き、1人の男が慌てた様子で入ってきた。
「キ、キング様! ついにやりましたよ!」
「あん? 何がだよ」
そう。椅子に座っている男こそがエンペラーのリーダーであるキングである。
キングは若干不機嫌そうにしながら入ってきた男を睨む。
「古代兵器です! ついに古代兵器が完成したんですよ!」
「……!? アティラリが完成したか!」
「はい!」
不機嫌な表情から一変し、途端に嬉しそうにするキング。
「それで真っ先にキング様に報告したいと思って急いで来たんです!」
「…………ククク。この日をどれだけ待ち望んだことか……! 急がせた甲斐があったな」
「どうします? すぐに使えるように頂上に運びますか?」
「勿論だ。すぐに取り掛かれ」
「はい!」
男は慌ただしく部屋から出ていった。
部屋に残ったキングは立ち上がり、先ほどまで見ていた窓の外にある山を眺める。
「これでようやく……ようやく俺様の計画が進む。待っていろよ腐敗したクズ共め。せいぜい残された余生を絶望しながら過ごすがいい……!」
キングは近くにある鞘に納められた剣を腰に差し、マントを手に取って羽織った。
そして頂上に向かうべく部屋から出ることにした。
この砦には数多くの人が住んでおり、全員がキングに従うエンペラーの一味である。
そして砦の頂上にも複数人が立っている。この場所に居るのが全員ではなく、他のメンバーは敷地内の地上から眺めていた。
頂上には既にキングも居り、近くにある巨大な大砲を見つめていた。
「おお……これが伝説の古代兵器の一つ……〝アティラリ〟か……!」
キングは興奮が抑えきれない様子で目の前の大砲を触る。
アティラリと呼ばれた代物は人の何倍も大きく、その迫力はこの場にいる全員が圧倒されていた。
「遥か昔にいた人はこんな馬鹿デケェもんを使っていたのか……」
その大きさに驚きながらキングはアティラリの周囲を動き回り、観察しながらあちこち触っていた。
しばらくそうしていたが、あることを閃いてキングは皆がいる方向に向いた。
「おい。これはもう使えるんだろ? ならさっそく試し撃ちしてみようぜ。丁度山に砲身が向けられているからな」
「し、しかし、まだあのお方が来ていないんですが……」
「ああ……
「は、はい」
男達は動き回り、山に命中するように調整するべく砲身を動かす。
そして準備が完了するとアティラリから離れていった。
「これでいけると思います!」
「うむ。後は撃つだけだな。記念すべき最初の一発は俺様がやろう」
キングはアティラリのすぐ側にあるスイッチ付近まで移動する。
「んじゃあ行くぜ!!」
そして叩きつけるように勢いよくスイッチを押した。
だが……
「………………あれ?」
「何も……起きない……?」
スイッチを押しても何も変化は無かった。
周囲に居る男達はすぐに発射されると思い身構えていたが、何も変化の無い状況に困惑していた。
「あの……キング様。これは失敗なんでしょうか……?」
「いや違うな。チャージに時間が掛かってるんだ。よく聞いてみろ」
「え……?」
男が耳を澄ませてみると、アティラリから正体不明の音を発しているのに気が付く。
そしてそれは徐々に大きくなっていく。
「これは一体……?」
「黙って見てろ。すぐに分かる」
キィィィィィィィイイイン………………
「テメェらよく見とけ。これが古代兵器の……アティラリの威力だ!!」
パシュッ!!
「ッ!」
予想していたものよりも小さい音と共に弾が発射された。
砲身から輝く丸いものが放たれ、一瞬で遠くまで飛んでいった。そして遠くの山の方向へと放物線を描きながら飛び続け……
着弾した。
ドォォォォォォォォォォォォォン!!!!!
「うおっ!?」
「ひいっ!?」
相当遠くの場所に着弾したのにも関わらず、少し遅れてビックリするような大きな音と共に衝撃波が伝わってきた。
キングを除く、その場に居る全員が思わず身を退いてしまうほどであった。
着弾地点からあがる大きなキノコ雲がその威力の凄まじさを語っていた。
「………………す、すげぇ」
「…………な、なんて破壊力だ」
「山が一瞬で吹き飛んだぞ…………」
そんな光景を見た人々は徐々にざわつき始める。
中には言葉を失ったまま眺め続けているが、次第に歓声が増えていった。
「す、すごいですね! ここまでの威力があるとは思いませんでしたよ!」
「……………………」
すぐ側にいた男がキングに話しかけるが、キングは反応せずにキノコ雲を眺めて続けていた。
「……? キング様? どうかしたんですか?」
「……………………………………いい」
「……え?」
「……いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぞぉぉぉぉぉぉ! すぅぅぅぅぅぅぅぅうんばらしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「キ、キング様!?」
突然叫び始めたキングを見て男は思わず下がってしまう。
「素晴らしい……実に素晴らしい……! これが破壊神をも倒したといわれる古代兵器の威力か!! こんなに威力があるなら破壊神すらも仕留められるのも納得だ! しかもこれだけの威力があるのに弾を補充する必要が無いのが気に入った! 内部でエネルギーをチャージしてそれを撃ちだす仕組みだからな! だが連発できないしチャージに時間がかかるのが難点だが、そんなのどうでもいい! こんな離れた場所から攻撃できるんだ! これならどんな奴も敵じゃねぇ! 逃げる暇もなく消し炭にしてやるぜ! アティラリさえあれば俺様は無敵だ!! ヒャハハハハハハハハハハハッ!」
キングのハイテンションっぷりに周囲の人達は静まり返ってしまった。
「おっといけねぇ。ついテンションが上がっちまったぜ」
そういって一呼吸置いた後、その場に居る人達の方向を向いた。
「テメェら今の見ただろ? 俺達は最強の兵器を手に入れた! もはや俺達に敵う奴はいない! 今まで俺達のことを見下してきた連中を見返す時が来た! これで国を……いや、世界を変えるんだ! 俺達ならできる! 今こそエンペラーの名を世界に轟かすんだ!!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」」」」」
キングの演説が終わると同時に大きな歓声が沸き上がる。その歓声は砦中に響き渡りそうなほど大きかった。
そのまましばらく騒いでいたが、次第に静かになっていく。
そしてキングがその場に居る全員を見回した後、ニヤリと笑った。
「さーて…………そろそろ掃除をしないとな……」
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