第142話:☆リーズとの対面

「リリィさんはこちらのシーツ一式を運んでもらいます。私は変えのお飲み物や軽食などを運びますので」

「これだな。うん分かった」


 ここは日常品が置かれている倉庫部屋。そこでメイド長は持っていく物を選んで持ち運んでいた。

 運ぶ先はリーズが居る部屋。これらの荷物はいつもメイド長が持ち運ぶ物であった。しかし今回はリリィも同行することになっているのでいつもより量が多かった。

 リリィも指示された物を持って積み上げていた。


「リリィさんにとっては初めての作業になりますので、これからやる内容は必ず覚えてくださいね」

「がんばる!」

「アナタから強く希望した仕事なんですから、厳しくいきますよ。甘えた態度を取るようなら解任させるように陛下に伝えますからね」

「うん!」


 相当不安なメイド長であったが、国王の命令ということもあって全力で対応せざるを得なかった。


「では行きますよ」


 そしてメイド長が部屋を出てからその後のにリリィが続く。廊下を進んで階段を何回か登り、リーズの部屋の間までやってきた。

 ドアに近づくと、2人の兵士が睨んできた。しかし気にせずメイド長が進むと、片方の兵士が声を出した。


「清掃の時間か。しかしいつもなら1人で作業するはずだ。隣に居るやつは誰だ?」

「陛下のご命令で彼女も同行することになりました。今後は2人で作業にあたります。なので彼女の顔を覚えておいてください」

「なに……? 命令だと……?」

「そんなの聞いてないぞ……」


 困惑するのも無理が無かった。なぜならリリィも追加されることが決ってから半日も経っていないからだ。

 まだ情報が伝わりきっておらず、一部の人しか知られていない事だった。


「お気持ちは分かります。私も未だに信じられないですから。ですが陛下が直接ご命令されてこうなったのは事実なのです。疑うなら確認していただいても構いません」

「「…………」」


 兵士達はお互いに顔を見合わせて悩みだす。

 ヒソヒソと小声で話し合っていたが、すぐにメイド長に振り向いた。


「分かった。アンタを信じよう。さすがに陛下に認められたメイド長が嘘をつくとは思えんからな」

「ありがとうございます」

「では入れ」


 兵士達はドアの前から離れ、壁際に寄った。

 それを確認してからメイド長はドアに近づき目の前で立ち止まった。

 そして数回ノックする。


「リーズ様。部屋の清掃を行います。中へ入りますがよろしいですか?」


 そういった後にしばらく待つが、部屋の中から声が聞こえてくることはなかった。


「…………では入りますね。失礼します」


 ゆっくりとドアを開けて部屋に入る。リリィもそれに続いて中に入り、ドアを閉めた。

 メイド長は少し離れた所に居る1人の少女を発見した。その少女は窓際で座っており、窓の外を眺めているようだった。


「リーズ様にお伝えしたいことがあります。今後は隣にいるリリィさんも清掃作業に加わることになりました。まだ未熟故、ご迷惑をおかけするかもしれせんが何卒ご容赦いただけますと幸いです」


 メイド長の言葉に反応したかのように少女はこちらに振り向いた。それはまるでたった今気が付いたかのような様子だった。


「あの子が……リーズ……」


 リリィはリーズと呼ばれている少女を見つめる。

 リーズは窓際にある椅子に座っていて、ついさっきまで窓の外を眺めていたようだった。

 綺麗な服装をしていて、王族に相応しいといえるほどの格好をしていた。しかしその表情は暗く、明らかに元気が無い様子だった。


「…………そう」


 たった一言。興味無さそうな小声が聞こえてきた。

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