第126話:衝撃の報告

「今日はどこに行くつもりなの?」

「ん~そうだな……」


 皆で集まってこれからどこに行くか相談中である。しかし今回はどの狩場に行くか少し悩んでしまう。

 近場は大体行ったことあるし、3人の実力的にも少々物足りなくなってきた頃だ。


 ならばもっと遠征して遠くの狩場までいこうかな。それともダンジョンにでも行くか……

 うーむ……どうしよう……


 そんな時だった。

 玄関のドアをノックする音が聞こえてきたのだ。


「すみません。ゼストさんいらっしゃいますか?」

「ん? この声は……」


 レオンさんだな。間違いない。

 玄関にまで移動してドアを開ける。するとそこにはやはりレオンさんが立っていた。


「どうしたんだ?」

「頼まれていた捜索の件について報告をしに参りました。これからお時間大丈夫ですか?」

「……!」


 ついにきたか……!

 報告するってことはリーズは見つかったのか!?


「まさか発見したのか!?」

「それらを含めて伝えたいことがあります。少々長くなるので馬車の中で話したいと思うのですが、よろしいですか?」

「あ、ああ……いいけど……」


 何だろう。言い方に違和感がある。

 見つけたのなら最初にそう伝えるはずだろうし、言いにくそうにしているような。

 まぁいいや。話してくれるんだからすぐに分かることだ。


「というわけで皆すまん。ちょっと行ってくる」

「あ、うん。じゃあ待ってるわね」

「何かあったんですか?」

「レオンさんに頼みごとしてたんだ。後で話すよ」

「は、はい。分かりました」


 3人とも不思議そうな顔をしていたが、気にせず外に出ることにした。

 家の前には豪華な馬車が待機していた。相変わらず貴族とかが乗ってそうな立派な馬車だな。


「こちらへどうぞ」


 レオンさんが馬車の入り口で扉を開けて待っていたので、すぐに乗り込むことにした。

 近くの椅子に座ると、レオンさんも対面に座った。


「で。リーズはどこに居るんだ? 無事なのか? そもそもリーズを引き取った人ってどんな人なんだ?」

「……………………」

「…………?」


 レオンさんは悩んでいるような表情で黙ったままだった。


「あの……どうかしたの?」

「…………いえ。すみません。今でも伝えるかどうか迷っているんですよ……」

「? どういうこと?」

「実はもっと確実な情報が入ってから伝えるつもりだったんです。現状は信頼性に欠ける上に、憶測混じりの内容となっているんです。このまま伝えてもゼストさんが余計に混乱してしまうだけかと思いまして……」

「???」


 言っている意味が分からない。さっきから曖昧すぎて何を言いたいのか全然伝わってこない。

 リーズが発見したのかどうかすら分からないままだし。

 何というかいつのもレオンさんらしくないというか……


「憶測混じり……? どいうこと?」

「僕の主観が入っているというか、想像を取り入れた内容になったというか……」

「……?」


 さらに訳が分からなくなった。

 さっきから何が言いたいんだ?


「……やはり日を改めましょうか。僕としてもいい加減な情報を伝えたくないですから……」

「いやいやいや! それは困るよ! ここまで来てそれはないでしょ! 何でそこまでもったいぶるの!? 知ってる事だけでいいから教えてくれよ!」

「…………そうですね。余計に混乱させてしまったようですみません。全てお話します」

「頼む」


 本当にどうしたんだろう。

 ここまで言い淀むってことは……まさかリーズの身に何かあったのか……?


「まず結論からお伝えしますと、リーズという子はまだ発見したわけではありません」

「やはり難しいのか……」

「しかし気になる情報が入ってきたんです。それを元に捜索を続けようとしましたが、思った以上に難航していてなかなか調査が進まないんですよ」

「気になる情報? 何かあったの?」

「普通なら気にも留めないような事だったんですが、名前を聞いてかなり興味を惹かれたんです」


 そういって一層険しい表情をした後に続けた。


「ここから北西に行くと〝リヒベル〟という小さな国があるのはご存じですか?」

「そういやそんな国があったようが気がする」

「そのリヒベル国にとある発表があったんです。それは長年行方不明になっていた王族が発見されたという内容でした。その王族はまだ子供で可愛らしい女の子だったようです」


 ……………………嫌な予感がしてきた。


「その子の名前は――リーズ・フェル・リヒタール……という名前でした」

「……!!!!」


 リーズ……!?


「その子がリーズなのか!? その国に居るのか!?」

「落ち着いてください。まだ決まったわけではありません。そういう名前だったというだけです」

「でも今リーズって……」

「ですからそういう名前の王族が発見されたというだけです。まだゼストさんが知っているリーズという子と同一人物と決まったわけではありません」

「……ってことは、まさか名前が似ているだけってこと?」

「はい……」


 そういうことか。名前の一部が似ているだけってことか。

 ……えっ。それだけ?


 さすがに根拠が無さすぎる。同姓同名なんて、世の中探せば一人ぐらい見つかるだろうし。


「名前が似てるからって同一人物とは限らなくない? リーズは孤児院に居たんだし、王族なんてありえないよ」

「ですが孤児院を去ってから王族の発表までの期間を考えてもあえりえる範囲なんです。両方の時期に不審な点はありません。日数的に考えても、孤児院を出てからリヒベル国に行ったとしたら納得できるんですよ」

「…………」


 確かにそれなら説得力は増したけど……

 それでもやはり根拠としてはまだ弱い。


「この事実は無関係とは思えなかったんです。偶然で片づけられるものなのでしょうか? そう思いませんか?」

「そうかも……しれないけど……」


 なるほどな。憶測混じりってこういうことだったのか。

 確かにこれは言うのをためらう気持も分かる。名前と時期だけで判断してるだけだもんな。


「そうだ。その発見された王族の子ってのはどんな人なんだ? リーズと似てるのか?」

「そこまではさすがに……。殆ど姿を見せてないようですし、そもそも僕達はゼストさんの知るリーズという子に会った事がありませんから……」

「ああそっか……」


 こうしてみると俺の依頼は本当に無茶な内容だったんだな。

 こんな限られた情報だけでここまで情報収集できるのはすごいと思う。


「現状はここまでが限界ですね。相手が王族である以上、気軽に会えるとは思えませんから」

「だろうね……」

「まぁ本人と確定したわけではありませんし、別人の可能性のほうが高いのも事実です。なので他の場所を探そうかと思います。引き続き捜索を続行しますか?」

「頼む……」

「承知しました。では情報が入ってきましたらまたお伝えに参ります」

「助かるよ……」


 そして馬車から出ることにした。

 だが内容が衝撃的すぎたせいか、しばらくその場で立ち尽くしていた。

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